カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画評|『アイアンクロー』ショーン・ダーキン監督(2023年)

プロレス一家のフォン・エリック兄弟を題材とした家族ドラマ『アイアンクロー』の映画評です。ボクは当時のプロレスを少しは見ていたので、懐かしさも相まってとてもハマれました。

本作のテーマは「困難と不屈の精神」だと受け取りました。基本的に悪人は出てこない。父親のフリッツ・フォン・エリック(ホルツ・マッキャラニー)は息子たちに自分の夢を託すが、無理強いはしない。息子たちも自らプロレスの道を歩み、厳しく鍛える父親の期待に応えようとする。そこにあるのは「家族愛」そのもの。

しかし、そんな幸せなプロレス家族に次々と不幸が襲いかかる。どれだけ鍛え上げた体にも畳み込むように起こる不幸に気持ちが保たない。不幸が起きると人は歪んでしまう。そこにあった「家族愛」も違うものに見えてしまう。

実際のフォン・エリック兄弟に起きたことが若干アレンジされていて、テーマが際立つように演出されている(どこが違うかはネタバレコメント欄で)。その演出の仕方も上手いなあと思う。映画作品としての『アイアン・クロー』にテーマ性を感じることができたし、ストーリーテリングとしてもとてもよかった。ケヴィン・フォン・エリック(ザック・エフロン)に幸せになってほしいと思った。


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それにしても『ハイスクール・ミュージカル』で一世を風靡した美男子ザック・エフロンがあんなムキムキで口下手のプロレスラーを演じるんだから時が経つのは早いよなあ。

あと、プロレス愛に満ちていると感じた。ジノ・フェルナンデスとかブルーザー・ブロディーとかファビュラス・フリーバーズとか出てくるのが嬉しい。あと、ブッチャーと「地上最凶悪コンビ」として日本でも活躍したザ・シークとか。グレート・カブキとか出てきたらもっとよかったのになー。

 

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⚠️⚠️以下はネタバレを含みます⚠️⚠️

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映画だと五人兄弟だけど、実は六人兄弟。末っ子のクリスは登場しない。 ケリー・フォン・エリック(ジェレミー・アレン・ホワイト)はチャンピオンになって1ヶ月経たないうちに前チャンピオンのリック・フレアーに敗れて王座を手放している。バイク事故で右足を切断したのはその二年後。 映画ではケビン・フォン・エリックは子供にフォン・エリックの名前を付けず、自身もプロレスから身を引いたように描かれている。実際にはケビン・フォン・エリックはリングネーム。本名はケビン・ロス・アドキッソン。なので、子供たちのファミリーネームがアドキッソンなのは当たり前。しかも、子供たちはフォン・エリックのリングネームを受け継いでプロレスデビューしている。ロス・フォン・エリックとマーシャル・フォン・エリック。本人もプロレス団体ノアに関わりを持っている。