「ヴェノム」シリーズの最終作である『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の映画評です。「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」(SSU)の5作目。前作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年)でトム・ホランドのスパイダーマンと共演か?と期待させましたが、それはならず。残念。
記者エディ・ブロック(トム・ハーディ)と彼に寄生するヴェノム(声:トム・ハーディ)はパトリック・マリガン刑事(スティーヴン・グレアム)の殺害容疑をかけられ追われる身となる。逃亡中にエディとヴェノムはゼノファージというヴェノムキラーに襲撃される。ゼノファージを放ったヌルはヴェノム達シンビオートの生みの親であり、シンビオートの反乱で宇宙に封印されていた。その封印を解くためにヴェノムが持つ「コーデック」を狙っている。ヴェノムたちはヌルとゼノファージから逃げ切れるのか……という話です。
ヴェノムというキャラクターはかなり確立されていて、お笑い要因としてもちゃんと仕事をしている。強くてかわいくて笑える。今回も声を出して笑う場面がいくつもあったあった。お笑いの面では合格。しかし、ストーリーの緊張感を保つことができていない。ヴェノムもゼノファージ相手にはさすがに分が悪い。防戦一方の戦いに緊張感が……続かない。たぶん、いろんな要素を詰め込みすぎなんだと思う。コンビニエンスストアの店主の登場も唐突だし、エイリアン愛好家でヒッピーなムーン家も登場の必然性があまりないように思える。
全体的に着地地点を探りながら、迷いながら進んでいる感じがする。ヴェノムたちの逃亡も行き当たりばったりな感じがする。迷っていたら最終地点についちゃった……みたいな。ちゃんと計算した盛り上がりを作れていないので、カタルシスも起きない。
ヴェノムというキャラクターはとても良いのだけど、「ヴェノム」シリーズは全体的にそのキャラクター性を活かしきれなかったよなあ。