カタパルトスープレックス

イノベーションに効く世界の情報を日本語で

書評|スタートアップとベンチャーキャピタルの関係を説明したバイブル|"Venture Deals" by Brad Feld, Jason Mendelson

f:id:kazuya_nakamura:20190114125530p:plain

スタートアップ界隈では尊敬されている人たちがいます。今回紹介する"Venture Deals"の共同著者のブラッド・フェルドはその一人です。コロラド州のボルダーはスタートアップの活動が活発ですが、そのスタートアップコミュニティーを立ち上げる主役の一人がブラッド・フェルドでした。その過程を綴った"Startup Communitties"はコミュニティー活動に関わる人たちにとってのバイブルの一つです。

Startup Communities: Building an Entrepreneurial Ecosystem in Your City (English Edition)

Startup Communities: Building an Entrepreneurial Ecosystem in Your City (English Edition)

ブラッド・フェルドはTechstarsという小規模のベンチャーキャピタルをボルダーでジャレッド・ポリスとともに立ち上げました。ちなみに、ジャレッド・ポリスは2018年にコロラド州知事となりました。そんな彼らがスタートアップのために事細かにベンチャーキャピタルからの資金調達について書いた"Venture Deals"はスタートアップを目指す人ならほぼ必ず読む本の一つです。すでに第3版まで出ていて、その時に合わせて内容も若干アップデートされています。

Venture Deals: Be Smarter Than Your Lawyer and Venture Capitalist

Venture Deals: Be Smarter Than Your Lawyer and Venture Capitalist

ベンチャーキャピタルというのはなかなかわかりづらい存在です。スタートアップにとっては資金調達の王道。資金を出してくれる人たちです。しかし、その資金がどこからきて、ベンチャーキャピタル自身はどのようにお金を儲けているのかきちんと理解をしている人はそれほど多くないと思います。まあ、普通に会社勤めをしていれば関係ないですからね。それでもお金ってどう循環して経済が回っているのかは理解していて損はないでしょう。簡単に言えば、リクルートのリボン図で「お金を投資したい人たち」と「

投資を受けて事業をしたい人たち」を結びつけるのがベンチャーキャピタルです。

経済はお金が循環することで発展します。金融機関の仕事はお金を動かすことです。その動かす先の一つがベンチャーキャピタル。ベンチャーキャピタルの役割はいい投資先を見つけたい人と投資を受けたい人にお金を流すことです。よく誤解する人がいるのですが、ベンチャーキャピタル自身がたくさんお金を持っていて、その投資益で儲けているわけではないのです。

「いい投資先を見つけたい人」はプライベートエクイティファンドなどです。例えば私たちの年金もそう。ほら、私たちにも関係あるでしょ?すごく簡単に言えば、出資する人をリミテッドパートナー(LP)、それを運用する人をジェネラルパートナー(GP)といいます。ベンチャーキャピタルにとってのお客さんは資金の運用を任せてフィーを払ってくれるリミテッドパートナー(LP)ということになります。で、そのリミテッドパートナーのお客さんは?普通の個人や法人ですね。私たちを含め。

日本語の本では(これもやはり起業家にとってのバイブルとされている)『起業のファイナンス』が"Venture Deals"に近いです。ただ、"Venture Deals"はベンチャーキャピタルが書いただけあって、ベンチャーキャピタルがどう動いているのかを詳しく解説してくれています。

起業のファイナンス増補改訂版

起業のファイナンス増補改訂版

この本はどういう人にオススメか

ベンチャーキャピタルから資金調達をしたい人にはもちろんオススメです。あと、スタートアップ的なやり方に批判的な立場をとる人にもオススメです。欧米ではすでにミルトン・フリードマン的なスタートアップ的なやり方に限界を感じる人たちが出てきています。それが日本に波及するのもそう遠くないのではないかと思います。

しかし、実際にどちらが「正しい」か「正しくない」とくっきり白黒つけられるものではありません。きちんと双方の立場を理解した上で、自分なりの判断をしていくしかないのです。そのために、スタートアップ的な資金調達のバイブルであるこの本は役に立つでしょう。