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書評|ベン・ホロウィッツの期待の新著は企業文化について|"What You Do Is Who You Are" by Ben Horowitz

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ベン・ホロウィッツの前著『HARD THINGS』は自らのスタートアップで出会った困難を赤裸々に描き、多くの人に絶賛されました。すごくいい本ですので、スタートアップや経営に興味がある人にはオススメします。そのベン・ホロウィッツの二作目なのですから、期待が高まってハードルが上がってしまいます。

新著"What You Do Is Who You Are"は企業文化に関する本です。『HARD THINGS』でも企業文化について少し触れられていました。「創業者の行動が企業文化を決める」みたいな感じでしたよね。行動したこと、行動しなかったこと両方が価値観を規定する。今回はそこをさらに掘り下げています。

HARD THINGS

HARD THINGS

What You Do Is Who You Are: How to Create Your Business Culture (English Edition)

What You Do Is Who You Are: How to Create Your Business Culture (English Edition)

ベン・ホロウィッツはとても現実主義者ですので、文化に過度の期待を抱かないよう警告します。よい文化が成功に導くわけではない。よい文化だから営業パイプラインが増えるわけではない。悪い文化でも成功することもある。よい文化はよい結果に結びつく可能性があるだけ。それでも長期的な成功を望むのであれば、よい文化を作り上げるのは大切ですよと説きます。

本書は歴史から企業文化の作り方を学ぶ構成となっています。例外的にMITメディアラボのシャカ・センゴーが現代を代表して紹介されています。まず、歴史の紹介があって、次にそれがどのように現在の企業に当てはまるのかを解説しています。ハイチを独立へ導いた一人であるトゥーサン・ルーヴェルチュールや、日本の武士道、モンゴルのチンギス・ハーンが取り上げられています。日本の武士道は新渡戸稲造の『武士道』ではなく、「死ぬ事と見付たり」で有名な『葉隠』などオリジナルに近い文献から多く引用されているのがすごい。

新校訂 全訳注 葉隠 (上) (講談社学術文庫)

新校訂 全訳注 葉隠 (上) (講談社学術文庫)

 

一番印象に残っているのはトゥーサン・ルーヴェルチュールでした。トゥーサン・ルーヴェルチュールが文化を規定する上で行ったことが7つあって、それがなかなか興味深かったです。覚えてもらうためにちょっとショッキングなルールを作るとか、ドレスコードを守るとか面白いですね。でも、確かにそうかもと思いました。

一番納得だったのは「明示的に倫理を守る」です。これはボクがマイクロソフトにいたから特にそう思うのかもしれません。倫理なく競争に勝つことだけを求めたら、勝てるかもしれません。マイクロソフトもそうでしたし、ウーバーもそうでした。でも、倫理がなければ最終的には破滅してしまいます。マイクロソフトはそれこそ手厳しくハードに学びましたし、ウーバーも学んでいる最中でしょう。

この本はどんな人にオススメか

すごく歴史とヒップホップが好きなんだなーというのは伝わりました。特に武士道に関しては只者じゃないです。ボクもそんなに知らなかったですもの。いっそのこと、歴史書を書いたらいいのに!

内容的には、うーん、期待が高かった分、肩透かしを食った感じです。語り足りなかったのかもしれませんが、『HARD THINGS』で語り尽くした感はあるんですよね。『HARD THINGS』をまだ読んでない人はまず『HARD THINGS』をオススメします。『HARD THINGS』を読んで、「まだ足りない!おかわり!」という人には"What You Do Is Who You Are"もオススメかもしれません。