カタパルトスープレックス

イノベーションに効く世界の情報を日本語で

インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|モバイルペイメント編

f:id:kazuya_nakamura:20190211124131p:plain

前回はファッションのeコマースを利用してカバンを買おうとしたらインド特有のクレジットカード事情のためにつまづいてしまった話でした。

今回はクレジットカードが使えないならどうする?という話です。では、クレジットカード以外はどのような選択肢があるのでしょうか。スクリーンショットを見ると、ネットバンキング、ウォレット、UPIとQRコードという選択肢があります。

インドのモバイルペイメント理解のための前提

インドは中国とは違います。日本とも違います。まず、これを理解しないといけません。モバイルペイメントの普及には技術と市場の両方が必要です。インドの技術は高いです。日本のPayPayも中身はインドのPaytmです。インドは昔から開発のオフシュアとしてレベルの高い開発者がたくさん育ててきました。

しかし、市場としてはまだまだ未成熟です。中国のモバイルペイメントの発展の歴史に関する記事でも書きましたが、モバイルペイメントは様々な要素が合わさってはじめて実現します。インドの人口は13億人で中国についで二番目に人口の多い国です。そして、スマホユーザーが3億人強(普及率約23%)です。これが中国や日本と大きく異なる点です。インドは技術は高くても、国内市場はまだまだ発展途上なのが特徴です。

インドでのモバイルペイメントの普及率は7.6%です。7390万人だと言われています。中国のモバイルペイメントの普及率は98%(日本は6%)だそうなので、中国と比べると大きな開きがあります。日本と同様で、まだまだ小さな市場に群雄割拠で小さなプレーヤーも含めてしのぎを削っているのが現在のインド市場です。

インドのウォレット

ウォレットアプリとはお金をアプリにチャージしておいて、それをQRコードなどで使うアプリです。中国のAliapay(アリペイ|支付宝)やWeChat Pay(ウィチャットペイ|微信支付)みたいなものです。日本のSuicaもウォレットですね。インドで最も普及しているウォレットアプリといえばPaytmだと思います。しかし、今回のオンラインショップで採用されているペイメントゲートウェイのRazorpayではどうやらPaytmやOxigenはサポートされていないようで、PayZapp、Ola MoneyとFreechargeのみ利用できます。

Paytm

f:id:kazuya_nakamura:20190211104400p:plain

2016年の高額紙幣廃止からUberやインド鉄道がいち早く採用するなど、急速に伸びたサービスがPaytmです。ちなみに日本のPayPayの基礎技術はPaytmです。インドのAlipayやWeChat Payといったポジショニングです。Alibaba(アリババ|阿里巴巴)やソフトバンクが主要株主です。800万のオフライン加盟店を獲得していて、インドの街を歩いていればPaytmのサインを見かけることは多いかと思います。

RBIからオンラインバンクとしては最初の認可を受けて決済銀行であるPaytm Payments Bank Limitedを設立しています。この辺り、中国と全く同じ流れですね。

 

MobiKwik

f:id:kazuya_nakamura:20190211140836p:plain

MobiKwikはPaytmの次にシェアを獲得しているモバイルペイメントですが、こちらもRazorpayではサポートされていません。MobiKwikもUberに採用されているモバイルペイメントです。

MobiKwikの拡大チャネルはeコマースとのパートナーシップで、オフラインから拡大したPaytmとの差別化ポイントとなっていました。でも、今は同じですけどね。

Oxigen Wallet

f:id:kazuya_nakamura:20190211125837j:plain

Oxigen Walletもインドで人気のあるモバイルペイメントの一つだと思うのですが、Razorpayではこちらもサポートされていません。実はインドで最初にモバイルウォレットを発表したのはPaytmではなくてOxigenでした。

PayZapp

f:id:kazuya_nakamura:20190211113240p:plain

PayZappはHDFC銀行が提供しているウォレットです。インドの銀行は1969年にほとんど国有化されました。1990年代からインドでも銀行業が自由化されはじめ、新しい民間の銀行が生まれました。HDFC銀行(The Housing Development Finance Corporation Limited)もその一つで1994年に設立されました。

それでも、国有銀行の方がまだまだ大きく、インドの4大銀行(インドステイト銀行/ICICI銀行/パンジャブ国立銀行 /バローダ銀行)もICICI銀行を除いて全て国有銀行です。HDFC銀行は挑戦者の立場なので、ウォレットのPayZappだけでなく、P2P決済のChillrなど新しいテクノロジーの採用に積極的です。

とはいえ、状況はまだまだ厳しいといえます。4大銀行の一角であるインドステイト銀行(SBI)のウォレットアプリであるBuddyは2018年11月にサービス終了しました。まだまだ未成熟なインド市場でHDFC銀行がどこまで頑張れるか。

Ola Money

f:id:kazuya_nakamura:20190211113341p:plain

Olaはインドで最も有名なタクシーアプリで、Uberとしのぎを削っています。中国でいえばDidi( 滴滴出行)のような存在。そのOlaが提供するウォレットアプリがOla Moneyです。AlibabaがDidiに出資してAlipayとの連携を深めたように、タクシーや映画館のような日々オフラインで利用するサービスの決済とウォレットアプリの相性は非常にいいです。

Freecharge

f:id:kazuya_nakamura:20190211133241p:plain

SnapdealFlipkartに次ぐ第2位のインドのeコマースサイトで、中国のAlibaba(第2位だからJD.comか)のような存在です。実際にソフトバンクやAlibabaから投資を受けています。このSnapdealが2015年に買収して組み込んだモバイルペイメントがFreechargeです。Alibabaの例もありますが、eコマースも当然ながら決済サービスと相性がいいです。

しかし、2017年には大手民間銀行のアクシス銀行がSnapdealからFreechargeを買い上げました。アクシス銀行は新興の民間銀行で、PayZappを提供しているHDFC銀行の直接的なライバルとなります。

で、問題は解決した?

察しのいい方はすでにお分かりでしょうが、インドの銀行に口座を持たない日本人はこれらのインドのモバイルペイメントは利用できません。つまり、まだカバンは買えないのです!ここまで書いておいてなんですが。

第三回:インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|UPI編