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インドのキャッシュレス化(ファッションeコマースの事例)|クレジットカード編

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ボクはファッションに関してはちょっとしたこだわりを持っています。音楽、映画、アート、ファッションはボクのアイデンティティの一部といってもいい。これに「食」を加えた五つにはオタク的なこだわりがあります。リアルに会って、これらを語らせたら迷惑なほどうるさいです。故に、今回は本題に入るまで前書きが長いです。

ボクのファッションのこだわりの一つは「ワンポイント」です。色でもアイテムでもアクセントを重視します。そのためには個性的でセンスのいいものが欲しい。個性的でセンスのいいアイテムは海外のオンラインショップで買うことが多いです。すみません、持っている人が増えると困るので、ここでは具体的なブランド名は書かないです。それらを身に付けていると「いいね、それ。どこで買ったの?」とよく聞かれます。聞かれれば、ちゃんと答えます(笑)。アクセントだから目立つんですよね。ちなみに、靴だけは日本のブランドで、スピングルです。アクセントになるアイテム以外はユニクロやZOZOのお世話になっています。ARIGATO会員はマジありがたい。

このブログではあまりボクのこだわりについて書かないのですが、ファッションという個人的なこだわりトピックからスタートしているのには理由があります。

インドのeコマースでカバンを買うための戦い

最近、ボクのインドの知り合いがカバンのブランドを立ち上げました。ここがスゴイ。センスのいい革の鞄とか一万円しません。コスパ最強です。インド人はもともと色彩センスが素晴らしいのですが*1、そのセンスが最大限に発揮されています。というわけで、すぐにオーダーしたのですが、これがなかなかうまくいかない。その理由はインド独自の決済システムにあります。やっと本題に入りました!

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インドのタンス貯金と現金主義からの決別

インドは日本と同様に現金主義の国でした。それでも、日本では銀行に預けますが、インドではリアルタンス貯金でした。現金を家に溜め込むのです。その理由は節税です。あ、脱税か。これが一部の特殊な層だけやっていることではなく、一般的な家庭レベルのやり方でした。そのため、つい最近までインドでは決済の90%以上が現金です。日本も現金主義ですが、インドはそれ以上に現金主義です。

最近はモディ首相も勢いが衰えていますが、彼は近年稀に見るリーダーシップを発揮した政治家です。本当に尊敬しています。そして、モディ首相がまだ勢いのあった時にガツンとやったのが高額紙幣廃止でした。

2016年11月に突然、タンス貯金として溜め込んだ高額紙幣(1000ルピーと500ルピー:それぞれ1700円、850円くらい)は一定期間内に金融機関に預け入れるか、新紙幣と交換しなくては紙くずになってしまうと発表しました。本当に一部の関係者しか知らない極秘裏に進めたプロジェクトで、ほとんどの人にとって寝耳に水の発表でした。政治腐敗があればこういうことできないですよね。モディ首相はこういうことができるのが本当にすごい。自分たちの資産であるタンス貯金が紙くずになってはたまらないので、インド人たちは銀行に殺到し、結果的に15兆2800億ルピー(約26兆3000億円)が銀行に集まりました。

この時のことをよく覚えていますが、シンガポールやアメリカに住んでいる友人たちも急いでインドに戻って家のタンス貯金を銀行に預けていました。全く価値がゼロになるよりは税金を払ったほうがマシ。それでも預けきれずに紙くずになってしまった資産もあったそうです。

インドの急速なキャッシュレス化

インド人はとても合理的な人たちです。気持ちの切り替わりが早い。これまで現金しか使えなかった店舗で小さな店舗も含めてクレジットカードが使えるようになりました。そもそも、現金を使ってたのは脱税のためですからね。その理由がなくなれば、キャッシュレスの方が便利だから使うよ。

インドのクレジットカードを海外で使う場合

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しかし、インドのクレジットカードのシステムはインド国外のシステムと若干違います。クレジットカードやデビッドカードは海外への不正送金を妨げるためにRBI(インド準備銀行:インドの中央銀行)によって規制されているからです。

この規制により、インドの銀行から発行されたクレジットカードは基本的にはインド国内でしか使えません。海外で使う場合は、発行してもらう時に海外で使えるようにしてもらわなければいけません。

どうしてそのような事がおきるのか?これは中国も同じなのですが、既存の国際ブランドへの警戒感もあるのだと思います。中国では独自のブランドであるUnionPay(2004年から普及開始)があるように、インドにはRuPay(2012年)があり、36%のマーケットシェアを獲得しています。中国のUnionPayが2002年に設立され、実際の普及開始まで時間がかかったように、インドのRuPayもその母体であるインド決済公社(National Payments Corporation of India)が設立された2008年から普及までは時間がかかっています。

海外のクレジットカードをインドで使う場合

インド国内で発行されたクレジットカードだけでなく、日本を含むインド国外で発行されたクレジットカードのインド国内での利用もRBIによって規制されています。このため、せっかく店舗でクレジットカードを受け付けていても……"International Cards are not accepted"とバッチリ拒否られます。

2018年4月にRBIは全ての決済サービス企業に対してインド国内における決済データ全てをインドで保管するよう求めました。つまり、国際ブランドであるVisaやMastercardもこの新しい規制に従わないといけなくなります。Bloombergの記事"Be Fully Compliant With RBI Rules By September"によると2019年9月までにはこの規制に対応して、海外のクレジットカードもインド国内で使えるようになりそうです。でも、それまでどうするの?

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友人のファッションブランドであるTribeではRazorpayという決済サービス(日本だとGMOペイメントゲイトウェイ、海外だとStripeのようなもの)を使っています。Razorpayはインドの決済サービスなので、デフォルト設定ではインドの規制に準拠した設定になっています。つまり、インド国外で発行されたクレジットカードは"International Cards are not accepted"というメッセージとともに拒否されてしまいます。

でも、そんなことで挫けるボクではありません。欲しいと思ったら欲しいのです。

(次回は100億円キャンペーンで有名になった日本のPayPayとも縁の深いインドのモバイルペイメント編となります)

*1:マドラス模様とかインド人のセンスじゃないと生まれないですよね。マドラスは現在のチェンナイです。