カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

書評|マルコム・グラドウェルの逆襲なるか|"Revenge of the Tipping Point: Overstories, Superspreaders, and the Rise of Social Engineering” by Malcolm Gladwell

マルコム・グラドウェルはとても優秀な語り部だと思うし、切り口も新鮮。センスがいいノンフィクション作家(邦題のタイトルが毎回センスのかけらもないのが残念だけど)だと思います。ただ本国では過去作品の考え方が経年劣化してきて、飽きられてきている…

書評|『負債論』のサブテキストとしてもよい『織物の文明史』|"Fabric of Civilization: How Textiles Made the World" by Virginia Postrel

糸ってどうやってできるのか考えたことあります?布はわかる。糸を折り重ねれば布になる。でも、糸って繊維でできてるんですよ細かくて短い繊維。それが長い糸になる。不思議じゃないですか?すでに翻訳が出ていますが、繊維から糸、糸から布ができ、それが…

書評|最後まで常識を揺さぶる『万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~』|"The Dawn of Everything" by David Greaber & David Wengrow

人類学者でアナーキストのデヴィッド・グレーバーの遺作であり考古学者デヴィッド・ウェングロウとの共著の"The Dawn of Everything"についての書評はいつか書こうと思っていたものの、ブログ休眠中に翻訳本『万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~』が…

書評|効率化は何のため?|"Saving Time: Discovering a Life Beyond Productivity Culture" by Jenny Odell

今回紹介する『Saving Time』の著者であるジェニー・オデルはアーティスト兼作家です。アーティストとしてはGoogleマップなどオンライン環境からの画像を活用し、現代のネットワーク化された存在の物質的な側面を強調する作品を制作しています。作家としては…

書評|アルゴリズム監視社会におけるデータ生態系の生き抜き方|"The Secret Life of Data: Navigating Hype and Uncertainty in the Age of Algorithmic Surveillance" by Aram Sinnreich & Jesse Gilbert

ショシャナ・ズボフの『監視資本主義』(2019年)以降、データ社会の暗部を告発する書籍が続いています。先日紹介したサラ・ラムダンのData Cartels』(2023年)もデータブローカーの寡占的市場という観点から同じテーマに切り込んだ書籍でした。 今回紹介す…

書評|もうくるくる詐欺とは言わせない!今度こそブロックチェーンがくる(はず)|"Read Write Own: Building the Next Era of the Internet" by Chris Dixon

今回はもうすぐ日本でも出版されるクリス・ディクソンの新著『Read Write Own』です。日本語で出ていない書籍を紹介する本ブログにおいて、もうすぐ翻訳が出てしまう書籍(2024年11月29日発売)を紹介するのはいかがなものかとは思いつつ、このブログを書い…

書評|暗号化通貨は匿名性が高いという神話は過去のもの|"Tracers in the Dark: The Global Hunt for the Crime Lords of Cryptocurrency" by Andy Greenberg

暗号化通貨を取引に利用したダークウェブ最大の闇売買サイト「シルクロード」の摘発を取り上げたニック・ビルトンによる書籍『American Kingpin』を以前取り上げました。今回とりあげるアンディー・グリーンバーグによる『Tracers in the Dark』はその後に起…

書評|トランプとマスクの時代、カジノ化していく社会の生き方|"On the Edge: The Art of Risking Everything" by Nate Silver

ネイト・シルバーはアメリカの統計学者で、選挙予測やデータ分析の専門家として知られています。統計分析ウェブサイトの「FiveThirtyEight」で2008年と2012年の米大統領選挙での正確な予測をして一躍有名になりました。いまもSilver Bulletinというニュース…