カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

書評

書評|「仕事とは何か」をビッグヒストリー的なアプローチで解き明かす|"Work" by James Suzman

生産性は技術革新のおかげでかなり上がりました。しかし、それでも私たちは仕事をしています。生産性が上がって、仕事が減るどころか増えています。 ケインズは「生産性が上がり、2030年には労働時間は週15時間になる。21世紀最大の課題は余暇になるだろう」…

書評|孤独と新自由主義の関係性|"The Lonely Century" by Noreena Hertz

日本でも老人の孤独死が問題になっていますが、「孤独」は世界的にも問題なようです。イギリスでは孤独担当大臣が設立されたほど。孤独って主観的な感情の気がするのですがUCLA孤独感尺度が指標として使われることが多いそうです。日本でもUCLA孤独感尺度は…

書評|大人のためのドラッグ講座|"Drug Use for Grown-Ups" by Carl L. Hart

読者の常識に挑戦する本は知的な刺激を与える本です。考えが及ばなかった部分に光が当たる感覚。しかし、それは「挑戦」なので、拒否反応もあります。理屈はわかるが、信じたくない。受け入れられない。日本語でも著書が翻訳されているカール・ハートの新著"…

書評|情報の価値の測り方、経済的な情報開示ルールとは|"Too Much Information" by Cass Sunstein

今回紹介する"Too Much Information"は日本でも多くの翻訳が出版されているキャス・サンスティーンの新著となります。キャス・サンスティーンはノーベル経済学賞を受賞したナッジ理論で有名なリチャード・セイラーとの共著『実践行動経済学(原題:Nudge)』…

書評|新自由主義が生んだ独占企業群がみんなから自由と機会を奪っている|"Monopolies Suck" by Sally Hubbard

ティム・ウーは著書"The Curse of Bigness"(2018年)で独禁法に焦点を当てて、現代が独禁法以前の「金ピカ時代(Gilded Age)」に戻りつつあると警笛を鳴らしました。そして2020年にようやく司法省が重い腰を上げてGAFAの独禁法違反について動きを見せはじ…

2020年ベスト洋書|ベスト・オブ・2020

2019年はショシャナ・ズボフの"The Age of Surveillance Capitalism"やローレンス・レッシグの"They Don't Represent Us"が発表され、資本主義や民主主義の根本について多くの人が考え直した時期だったと思います。2020年の英語圏の書籍は、2019年から引き続…

書評|みんなの脳についての知識は意外と間違っている|"Seven and a Half Lessons About the Brain" by Lisa Feldman Barrett

ボクは脳についての書籍が大好きです。ジーナ・リッポンの"The Gendered Brain"もすごく刺激的でした。たぶん、脳は誤解が多い科学だから、その誤解を自分の中で解きほぐしていくのが楽しいんだと思います。へー、そうなんだ!日本でも『情動はこうしてつく…

書籍|能力主義と自己責任は正しいのか?|"The Tyranny of Merit" by Michael J. Sandel

2020年のアメリカ大統領選挙で負けたものの、なぜドナルド・トランプはこれほど多くの人を惹きつけるのか?なぜイギリス人はEU離脱を支持するのか?ポピュリズムと一言で言うけれど、なぜポピュリズムがここまで台頭してきたのか?ローレンス・レッシグが主…

書評|人間と機械の利害は合致できるのか|"The Alignment Problem" by Brian Christian

グーグルで人工知能(AI)の倫理を研究していたティムニット・ゲブルが解雇されたニュースは2020年の終わりのニュースとしてはかなり衝撃的に受け止められました。なぜか。職場における差別の要素もあるのですが、AI倫理の重要性がかなり大きくなってきてい…

書評|スタートアップを大企業からの攻撃から守るイノベーションの鎖|"The Innovation Stack" by Jim McKelvey

ペイメントのスタートアップとして大成功したSquareといえばジャック・ドーシーのイメージが強いと思います。ジャック・ドーシーはツイッターの共同創業者でもあり、知名度が高いので仕方のないことです。今回紹介するのはSquareのもう一人の共同創業者であ…

書評|ルービック・キューブ考案者が語る創造性とデザイン|"Cubed" by Ernő Rubik

ルービック・キューブの考案者エルノ・ルービックの初書籍が今回紹介する"Cubed"です。ルービック・キューブが世に出てから40年以上経過しています。これまでに自伝とか出ていそうなものですが、この本がエルノ・ルービックが初めて書くの書籍。自分とその発…

書評|(個人的に)ダメだった書籍を晒してみる

人間には好き嫌いがあって、ダメなのはダメ。本を読んでいて「これヤバいなあ」って思うことありません?日本語だと危険信号って言えばいいのかな。英語だとレッドフラグって言います。ボクにとってレッドフラグなのがいくつかあります。 脳科学をリファレン…

書評|世界の終わりの現在|"Notes from an Apocalypse" by Mark O'Connell

「世界の終わり」は魅力的なトピックで、遥か昔からずっと語られてきました。世界の終わりはもうすぐだ!と。マーク・オコネルも「世界の終わり」に取り憑かれた一人で、その研究成果をまとめたのが本書"Note from an Apocalypse"です。専門書と言うよりはエ…

書評|人間の「仕事」消滅後の世界|"A World Without Work" by Daniel Susskind

人工知能によって人は仕事が奪われる!この手の話はすでにクリシェですよね。今さら真面目に語ってどうするの?今回紹介する"A World Without Work"はまさに語り尽くされた感のあるこのネタを改めて大真面目に検証する本です。 本書を書いたダニエル・サスキ…

書評|壊れた科学に泣かないで|"Science Fictions" by Stuart Ritchie

科学は人類の進歩に欠かせない手段ですよね。生物的な進歩よりも技術的な進歩の方がずっと早く、そのスピードが人間と他の生物の大きな差となっています。一方で、科学の信用が揺らぐような事件も起きています。日本だとSTAP細胞の論文の問題が取り沙汰され…

書評|アナーキストから見た民主主義|"There Never Was a West" by David Graeber

デヴィッド・グレーバーが59歳の若さでお亡くなりになりました。最近だと『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』が日本でも翻訳されて紹介されたばかりでした。本来でしたらこのブログでは日本未発表/未翻訳の作品しか取り上げないのですが、…

書評|文化人類学から見た通貨と負債の歴史は経済学とはだいぶ異なる|"Debt" by David Graeber

デヴィッド・グレーバーが59歳の若さでお亡くなりになりました。最近だと『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』が日本でも翻訳されて紹介されたばかりでした。本来でしたらこのブログでは日本未発表/未翻訳の作品しか取り上げないのですが、…

書評|データサイエンス時代のソフィストたちに騙されない方法|"Calling Bullshit" by Carl Bergstrom and Jevin West

英語でブルシット(Bullshit)は「バカらしい戯言」です。ウソ(Lie)とも言い切れない。嘘の場合もあれば、本当の場合もある。ブルシットは多くの場合はハッタリだったり、ごまかしたり、騙そうとする意図があります。ブルシットだとわかれば、トランプのゲ…

書評|60年前のケンブリッジ・アナリティカはダメなスタートアップの典型だった?|"If Then" by Jill Lepore

フェイスブックなどから個人情報を集め、データ分析をして、投票行動に影響を与えるキャンペーンを行ったケンブリッジ・アナリティカは多くの人にとって民主主義への脅威に映りました。しかし、ケンブリッジ・アナリティカのような会社は最初ではありません…

書評|フィルターなしのインスタグラムの歴史|"No Filter" by Sarah Frier

インスタグラムがフェイスブックに買収されるまでの成功物語って有名ですよね。ボクも以前にまとめたことありますし。もちろん、成功には後日談がつきものです。インスタグラムの創業者二人はフェイスブック買収後もしばらく残りましたが、二人揃って2018年…

書評|ピケティの考える富の不平等と政治|"Capital and Ideology" by Thomas Piketty

今年に入って登場したトマ・ピケティの新著"Capital and Ideology"は前著『21世紀の資本』をさらに発展させ、経済不均衡と政治の関係を歴史的に紐解いています。ページ数も"Capital and Ideology"は1,150ページと相変わらずのレンガ本。『20世紀の資本』の69…

書評|社員の管理なしでイノベーションして成長するネットフリックスの秘密|"No Rules Rules" by Reed Hastings & Erin Meyer

*異例の速さで日本語翻訳が出たのでリンクを追加しました。 ネットフリックスは間違いなく最も成長している企業の一つです。1997年に創業し、その三年後の2000年にはレンタルビデオの巨人だったブロックバスターに身売りを提案するが断られます。しかし、ネ…

書評|テクノロジーが触れてはいけない領域はあるのか?|"Sex Robots and Vegan Meat" by Jenny Kleeman

「ソフトウェアが世界を飲み込む」と宣言したのはマーク・アンドリーセンでした。2011年のウォールストリート・ジャーナル寄稿記事でマーク・アンドリーセンが指摘してことはほぼ現実になりました。しかし、まだまだテクノロジーが触れていない領域がありま…

ジャン=クロード・カリエールについて

コロナ禍の間、通勤しなくなり、通勤時間の間にオーディオブックで「読書」する習慣がすっかりなくなってしまいました。移動時間がなくなり、読書時間が減りました。その代わり増えたのが映画を観る時間です。ちゃんと数えるのも面倒ですが、今年に入って既…

書評|アメリカのシャーロック・ホームズはリンカーン・ライムのルーツ|"American Sherlock" by Kate Winkler

ボクはシャーロキアンとまではいきませんが、シャーロック・ホームズが大好きです。「聖典」はすべて読んでいますし、映画もだいたい観ています。ロンドンにあるベーカー街221B(シャーロック・ホームズ博物館)にも行きました。シャーロック・ホームズは化…

書評|「頭で考えたらモノが動く」はすぐそこにある現実|"The NeuroGeneration" by Tan Le

映画『アベンジャーズ』でロバート・ダウニー・ジュニア扮するトニー・スタークが浮かんでいる画面を手でササっと操作したり、やはり映画『ドクター・ストレンジ』でベネディクト・カンバーバッチが光の魔法陣をバッと手から出して防御したりカッコいいです…

書評|数学者のYouTuberによる楽しい数学|"Humble Pi" by Matt Parker

最近ではYouTuberの影響力が大きくなってきました。テレビではなくYouTubeのチャンネル、音楽だってYouTubeで聴く。YouTuberはエンターテイメントだけではなく、学術の世界にも広がっています。今回紹介する数学をエンターテイメントする"Humble Pi"の作者マ…

書評|ポール・クルーグマンから保守ゾンビへの宣戦布告|"Arguing with Zombies" by Paul Krugman

政治的な意味において保守(小さな政府)に対する考え方はリベラル(大きな政府)です。そして、経済的な意味においてリバタリアン(完全自由主義)に対する考え方がプログレッシブ(革新主義)です。政治的な考えは経済的な考えに結び付きます。逆に経済的…

書評|ラガードのためのイノベーション 入門|"The Future is Faster Than You Think" by Peter Diamandis

イノベーター理論はイノベーションがどのように波及していくか説明しています。最初にイノベーターと言われるアンテナの感度がよくって、新しいものにすぐ飛びつく人たちがいて、次にアーリーアダプターに伝播します。そして、最後に渋々受け入れるのがラガ…

書評|新自由主義批判に対する保守からの回答―大きな政府は大きな腐敗を生む?|"Profiles in Corruption" by Peter Schweizer

ピーター・シュワイザーは調査報道記者です。そして、ルネッサンス・テクノロジーズのロバート・マーサーらとともに保守系シンクタンクの政府説明責任研究所を設立した一人です。更に、オルタナ右翼を代表するメディア『ブライトバート・ニュース・ネットワ…