カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画

映画評|ガイ・リッチー監督最新作は原点回帰の良作だった|"The Gentlemen" by Guy Ritchie

日本未公開作品のレビューを書くリスクとは何か?それは、レビューを書く前に日本公開されてしまうことです。書籍の場合、そのリスクは大きくありません。書籍の翻訳って時間がかかりますから。しかし、映画の場合はレビューを書く前に日本公開されてしまう…

映画評|セリフと音の不在が不安を生む|"Bait" by Mark Jenkin

今年はコロナ禍で生活のリズムが変化したために読書が減り、映画鑑賞が増えました。さすがに今年も後半になり、書評があまりに少ないことに気づき、大急ぎでたくさんの本を読みました。おかげでだいぶ読書もキャッチアップできた感じです。そして、ふと気が…

ジャン=クロード・カリエールについて

コロナ禍の間、通勤しなくなり、通勤時間の間にオーディオブックで「読書」する習慣がすっかりなくなってしまいました。移動時間がなくなり、読書時間が減りました。その代わり増えたのが映画を観る時間です。ちゃんと数えるのも面倒ですが、今年に入って既…

映画評|1980年代アッパークラスの1990年代からの眺望|"The Last Days of Disco" by Whit Stillman

1990年初頭から脚光を浴びたインディー映画監督といえばスパイク・リー、アキ・カウリスマキ、クエンティン・タランティーノを筆頭にケビン・スミスやハル・ハートリーなどたくさんいますね。それに比べてホィット・スティルマンは同じ時期に自主制作で脚光…

映画評|「ファックド・アップ(どうしようもない奴ら)」を描き続ける監督|"Beach Bum" by Harmony Korine

今回紹介する日本未公開作品はハーモニー・コリン監督最新作"Beach Bum"です。本作に限らず、ハーモニー・コリン監督作品は好き嫌いが分かれます。一作だけ観てもなかなか登場人物たちに共感できないかもしれません。それは登場人物が全て「ファックド・アッ…

映画評|『パラサイト』の元ネタも救ったマーティン・スコセッシの映画保存プロジェクト|The World Cinema Project

ボクは本を読むのが好きで、音楽を聴くのが好きで、映画を観るのが好きなインドア系の人間です。だから、このブログも本と音楽と映画が中心です。ブログで紹介するのは日本でまだ紹介されていない作品が中心ですが、日本の本も読みますし、邦画も観ます。 日…

映画評|アメリカン・ニューシネマに中指を突きつけたパンクな映画|"Wanda" by Barbara Loden

1960年代中頃から1970年代後半は映画ではアメリカン・ニューシネマの時代です。音楽ではプログレッシブ・ロックの時代ですね。アメリカのテレビジョンやイギリスのセックス・ピストルズのようなパンク・ロックはその後の1970年代後半からとなります。今回紹…

映画評|道なく、愛なく、犯罪のないボニー&クライド|"River of Grass" by Kelly Reichardt

有名監督の最初の作品って初期衝動が詰まっていて好きなものが多いです。スパイク・リー監督の『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』とかクエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』とか。しかし、意外と初期作品ってメディアになってなかったり…

映画評|サイケデリックでダウナーな暴力|"Bliss" by Joe Begos

ニコラス・ケイジ主演映画『マンディ― 地獄のロード・ウォーリアー』が大好きで、映画の中で主人公が着ていたロングTシャツ(虎の絵のやつ)をオフィシャルストアで買ったくらいです。クエンティン・タランティーノは50年代や60年代をモチーフにしたジャンル…

映画評|卒業の思い出づくり映画の系譜|"Booksmart" by Olivia Wilde

映画には多くの定番テーマがあり、その多くは人生の転換期です。「卒業」はその一つです。若き日のヒース・レジャーが眩しい『恋のからさわぎ』、サントラが好きだった『プリティ・イン・ピンク』や目立たない女の子をプロムクイーンに仕立てる『シーズ・オ…

映画評|老舗のとんかつ屋に似た幻のホラー映画|"The Ghost of Sierra de Cobre" by Joseph Stefano

老舗の味は意外とおいしくない。「おいしい/おいしくない」は主観であって、絶対的な尺度などないにしても。もちろん、例外もあるのですが、これがボクが色々と食べ歩いた結論です。老舗は雰囲気がいいです。趣があります。でも、味は今ひとつだったりする…

映画評|ひたすらTVゲーム『パックマン』をプレイするだけの映画なのに面白い|"Relaxer" by Joel Potrykus

今回紹介するジョエル・ポトライカス監督作品"Relaxer"を簡単に説明すれば「男がひたすらテレビゲーム『パックマン』をプレイする映画」です。ジャンル的には不条理劇で密室劇。え?何が面白いの?ですよね。これがなかなか面白い映画なんです。 Relaxer (Lt…

映画評|エドガー・アラン・ポーの未完の作品からスタートした怪作|"The Lighthouse" by Robert Eggers

これまで日本ではまだ翻訳されていない本を紹介してきましたが、今年はもっと日本未公開の映画も紹介していきます。今回は良作を連発して勢いが止まらないA24制作でロバート・エガース監督作品"The Lighthouse"です。評価が高い映画なので、そのうちに日本で…

映画評|普通であることが凄い映画|"Chained for Life" by Aaron Schimberg

今回紹介するアーロン・シムベルク監督作品"Chained for Life"は「普通であることが凄い」非常に稀有な映画です。何がそんなに凄いのか、ネタバレにならない程度に解説したいと思います。ぜひ日本でも公開してほしい! まず、"Chained for Life"は映画として…

2019年映画ベスト5|ベスト・オブ・2019

数えてみたら2019年に観た映画は65本でした(数え忘れを含めると、たぶん、実際はもうちょっと多い)。一週間に一本以上は見ている計算ですね。えー、そんなに観てるかな?と自分でも不思議なのですが、数えてみたらそうなんだから仕方がない。 その中でも「…

2019年和書ベスト3冊(または『映画秘宝』讃歌)|ベスト・オブ・2019

このブログのコンセプトは「イノベーションに効く世界の情報を日本語で」だったので、日本の情報は取り扱いませんし、日本語で書かれた和書も取り上げませんでした。それでも、ボクは日本人なので日本語で書かれた書籍も買いますし、読みます。英語の本に比…

会話の糸口としての音楽、落語、酒と映画

ボクは基本的に人づきあいが苦手です。面倒に感じてしまいます。でも、人間は社会的な生き物で、人づきあいせずには生きていけません。そこで、会話が苦痛にならないように戦略を立てるようになります。ふつうの人はこんなこと考えずに済むのかもしれません…

映画評|イーロン・マスクのプロトタイプとしてのジョン・デロリアン|Framing John DeLorean

デロリアンといえば映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に登場するタイムマシンに改造されたスポーツカーですね。実際のモデル名はDMC-12です。作った会社はデロリアン・モーター・カンパニー(DeLorean Motor Company)で、その創業者がジョン・デロ…

書評|映画監督ケヴィン・スミスの自宅からの実況中継|"Tough Sh*t" by Kevin Smith

ボクがインディー映画を好きになったのは80年代からで『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』とか『ニュー・シネマ・パラダイス』とか『八月の鯨』とかを岩波ホールとかミニシアターで観ていました。しかし、インディー系の映画が本当に市民権を得たのは90年代か…

2019年上半期映画ベスト3:映画のトレンドは「中国」「ストリーミング」「センスのいいパッケージング」

今年もなかなかいいペースで映画を観ているので、この辺でまとめます。上半期のベスト3は以下の三本(あいうえお順)。内容はひとこと評を参考にしてください。三本のうち二本が中国映画なのがイマドキな感じですよね。中国はアプリもそうですが、小説、音…

映画評|虚構と現実、過去と現在が交差する音楽映画|ローリング・サンダー・レヴュー:マーティン・スコセッシが描くボブ・ディラン伝説

(若干ネタバレがありますのでご注意を) ボクは遅れてきた世代なのでボブ・ディランの全盛期をリアルタイムで体験していません。それでも主なアルバムは持っていたし、ブートレグシリーズも何枚か持っていました。遅れてきた世代だからこそ、ボブ・ディラン…

映画評|熱量の少ないドキュメンタリー映画|Titicut Follies

『チチカット・フォーリーズ』はドキュメンタリーの名手フレデリック・ワイズマンの初監督作品。友人から韓国で発売されているDVDをお借りして初めて観ました。 精神異常犯罪者を収容する病院の日常を描いたドキュメンタリー作品。フレデリック・ワイズマン…

映画|アメリカ版低学年の『トレインスポッティング』|mid90s(ネタバレなし)

今回は優良作品を連発しているスタジオA24の最近の作品の中でもまだ日本未公開の"mid90s"の紹介です。監督は今回が初監督作品となるジョナ・ヒル(写真)です。A24って『へレディタリー/継承』で初監督を務めたアリ・アスターといい、経験が少ないけどいい…

映画|グランドホテル方式のネオ・ノワール|Bad Times at the El Royale(ネタバレなし)

今月に観た映画で一番良かったのは黒沢清監督の『散歩する侵略者』(2017年)ですが、取り上げるのはブログの趣旨「イノベーションに効く世界の情報を日本語で」にマッチしている日本未公開の"Bad Times at the El Royale"(2018年)なので、こちらをご紹介。…

2018年映画ベスト8本(ネタバレなし)|ベスト・オブ・2018

2018年は映画業界におけるネットフリックスの存在感が際立った年でした。今回選んだベスト映画も『アナイアレイション -全滅領域-』、『ROMA/ローマ』と『バード・ボックス』の三本がネットフリックス配給となっています。テレビドラマではすでに大きな存在…

映画評『スノーデン』|エドワード・スノーデンから学ぶ自由

社会人になって読書や映画鑑賞から離れていた時期もありました。音楽もそう。CDをケースから出して、プレーヤーに入れる。ちょっとしたことなんだけど、億劫になってしまう。でも、インターネットとサブスクリプションモデルのおかげで、音楽や映画がまた身…