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興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画評|ロバート・ダウニー・ジュニアのお父さんが作った早すぎたブラックスプロイテーション|"Putney Swope" by Robert Downey Sr.

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今回紹介する"Putney Swope"はロバート・ダウニー・シニア監督(ロバート・ダウニー・ジュニアのお父さん)による広告業界風刺ドラマです。ブラックスプロイテーションはメルヴィン・ヴァン・ピーブルズ監督『スウィート・スウィートバック』(1971年)が最初とされますが、それより2年早い1969年製作作品です。

Putney Swope [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/07/02
  • メディア: Blu-ray

この作品は黒人監督作品ではないですが、その後のブラックスプロイテーション映画との共通点が非常に多いです。本作で音楽を担当するのがチャーリー・キューヴァという人で、ジャズファンクがとてもかっこいい。登場人物たちも広告代理店の社員なのにギャング風。普通に拳銃を持っている。白人は使えない奴らで、黒人が斬新なアイデアでビジネスをリードしていく。ね、ブラックスプロイテーションっぽいでしょ。

Putney Swope

Putney Swope

  • アーティスト:Various
  • 発売日: 2006/09/18
  • メディア: CD

非常に低予算(25万ドル)で作られた作品ですが、とてもカッコいい。コントラスト強めの白黒映像と黒人特有の会話。初期のクエンティン・タランティーノとスパイク・リーを足して二で割った感じ。

本作の舞台となるのは代表取締役が急死したため、投票で後任が選ばれることになった広告代理店。選ばれたのは唯一の黒人取締役だったパトニー・スウォープ(アーノルド・ジョンソン)。トップに立ったパトニー・スウォープは社員を黒人に入れ替え、社名も「トゥルース&ソウル社」に変更してしまいます。革新的なアイデアがヒット商品を続々生み出し、アメリカ大統領からも一目置かれる存在になりますが……という話です。

内容は「もし黒人がメディアを席巻したら」というファンタジーを膨らませたもので、社会批判というよりは「アイデアを膨らませるのを楽しんだらこんなのができちゃいました」って感じ。結果的にそれが広告業界の風刺っぽく出来上がった。クールさが前面に来ているため、メッセージ性はあまり感じませんでした。

ロバート・ダウニー・シニア監督は「もし○○だったら?」というアイデア発想が好きなようで、次作"Pound"(息子のロバート・ダウニー・ジュニアの映画出演デビュー作)では「もし人間が犬として里親が見つかるまで施設に収容されたら?」という作品です。だから、本作"Putney Swope"についても意識してブラックスプロイテーションを作ったわけではなく、たまたま発想がそういう方向へ向かったのだと思います。