日本でも老人の孤独死が問題になっていますが、「孤独」は世界的にも問題なようです。イギリスでは孤独担当大臣が設立されたほど。孤独って主観的な感情の気がするのですがUCLA孤独感尺度が指標として使われることが多いそうです。日本でもUCLA孤独感尺度は老人の孤独などの研究に使われています。
コロナ禍で人との接触が極端に減ったこともあり、孤独を感じる人は増えているようです。しかし、今回紹介する"The Lonely Century"の著者であるノリーナ・ヘルツはコロナ禍以前から孤独を感じる人は増えていたと主張します。現代を「孤独の世紀」と位置づけています。なぜ、多くの人は孤独感を感じるようになってしまったのでしょうか?
The Lonely Century: Coming Together in a World that's Pulling Apart
- 作者:Hertz, Noreena
- 発売日: 2021/06/03
- メディア: ペーパーバック
ノリーナ・ヘルツによれば、「孤独の世紀」の原因は新自由主義にあるのだそうです。え?また?最近の英語圏の言論を追いかけている人だったら分かると思いますが、新自由主義はあらゆる悪いことの根元のように語られることが多いです。それにしても、孤独まで新自由主義のせいかよ!とサスガのボクもツッコミを入れたくなりました😹
それ以外にもAIやIoT、民泊まで孤独の原因として糾弾されます。(ボクの個人的な見解ですが)あまりにも広範囲に孤独の原因を求めようとしてしまい、結局何が言いたいのか分からなくなっているのがこの本の欠点です。今は孤独の世紀だ、うむ、それは分かる。では、どうしたらいい?それがよく分からないんです。新自由主義の新しい批判として「孤独」はなかなか面白いアングルだとは思いますが。
全般的にとっ散らかった印象のある本書ですが、面白かった部分もあります。本書の前半は「孤独」とは何か?という本質的な部分に光を当てています。脳から分泌される化学物質は恐怖と孤独は近いのだそうです。だから、孤独は心理的なだけでなく、身体的なのだそうです。どれくらい孤独が身体的に影響を与えるかといえば、30%の確率で早死するとの調査結果もあるそうです。
もう一つ面白かったのが、孤独の攻撃性に関するネズミの実験。ネズミをある一定期間隔離して孤独状態にすると、孤独が定常化するのだそうです。孤独が定常化したネズミを他のネズミと会わせる。そうすると、久しぶりにあった別のネズミに対して攻撃的な行動を取るのだそうです。二極化と不寛容性の関係性も孤独から考えるとわかりやすいのかもしれないと思いました。