1995年公開の『EAST MEETS WEST』は、岡本喜八監督が長年温めていた企画であり、時代劇と西部劇を融合させたアクション・コメディ作品です。主演には真田広之、竹中直人、岸部一徳などが名を連ね、全編の約9割をアメリカでロケーション撮影するという意欲的な試みがなされました。
岡本監督自身、10年前に第1稿のシナリオを書き上げて以来の念願の企画であり、異色の時代劇として注目を集めました。
あらすじ|侍と忍者、そして西部の荒野で繰り広げられる冒険
1860年、日米修好通商条約の締結のため、勝海舟(仲代達矢)率いる使節団が咸臨丸でサンフランシスコに到着します。その中には、暗殺を企む水戸脱藩浪士の上條健吉(真田広之)や、忍者の為次郎(竹中直人)が含まれていました。しかし、使節団の持参した三千両の小判が強盗団に奪われ、上條は濡れ衣を着せられることに。彼は父親を殺された少年サム(スコット・バッチッチャ)と共に強盗団を追い、途中で為次郎とも合流。彼らは協力しながら、西部の荒野で強盗団との対決に挑みます。
テーマ|異文化交流と友情、そして復讐
本作のテーマは、異文化交流と友情、そして復讐です。日本からの使節団とアメリカ西部の人々との交流を通じて、文化の違いや共通点が描かれています。また、父親を殺されたサムの復讐劇や、上條と為次郎の友情の芽生えなど、人間ドラマも丁寧に描かれています。岡本監督は、史実とフィクションを巧みに組み合わせ、異文化の出会いをユーモラスかつシリアスに表現しています。
キャラクター造形|個性豊かな登場人物たち
真田広之演じる上條健吉は、暗殺者としての冷徹さと人間味を併せ持つキャラクターであり、その演技は高く評価されています。竹中直人の為次郎は、コミカルな忍者として物語にユーモアを添えています。岸部一徳のジョン万次郎や、仲代達矢の勝海舟など、脇を固めるキャストも個性的で、物語に深みを与えています。
映画技法|岡本喜八監督の独特な演出
岡本喜八監督は、本作で独特の演出スタイルを披露しています。冒頭の歴史的背景の説明はテンポ良く進み、観客を物語に引き込みます。また、全体の9割をアメリカでロケーション撮影することで、リアリティとスケール感を追求しています。しかし、中盤のテンポの遅さがあり、中だるみするぶぶんがあります。
まとめ|異色の試みとその評価
『EAST MEETS WEST』は、時代劇と西部劇を融合させた異色の作品として、岡本喜八監督の挑戦的な姿勢が光ります。史実とフィクションを組み合わせたストーリーや、個性豊かなキャラクターたちが魅力的です。しかし、コメディとシリアスのバランスや、テンポの面で課題も見られ、一部の観客には物足りなさを感じさせる部分もあります。それでも、岡本監督の独特の世界観と演出を楽しめる作品として、一見の価値があります。