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​『ザ・ゲスイドウズ』映画レビュー|売れないバンドが田舎で見つけた再生の音

本作は、売れないパンクバンド「ザ・ゲスイドウズ」の4人組が、マネージャーからの提案で田舎に移住し、新たな楽曲制作に挑む姿を描いた作品です。過去に培ったSFやホラーの要素をちりばめつつ、​あまり細かいことは気にせず、好きなものを全部入れて一気に作り上げた感じが宇賀那健一監督のパンク精神を表しています。

海外でパンク映画といえば『レポマン』(1984年)や『SLC Punk!!!』(1998年)など数多くありますが、邦画ですと宮藤官九郎監督の『少年メリケンサック』(2008年)くらいしか思い浮かびません。今回の​『ザ・ゲスイドウズ』は邦画では珍しいパンク映画で、宇賀那健一監督のこれまでのエッセンスと「こういうのが好き!」という拙速な雑多さが楽しい映画に仕上がっています。

あらすじ|田舎で見つけた新たな音楽の可能性

26歳のハナコ(夏子)は、売れないパンクバンド「ザ・ゲスイドウズ」のボーカル。自分はロックレジェンドのように27歳で死ぬと信じている。27歳まであと一年しかない。しかし、​彼らのアルバムは全く売れず、マネージャーの高村(遠藤雄弥)から田舎への移住と曲作りを命じられます。

田舎で野菜を作りながら曲作りに集中できる環境を手に入れたバンドメンバーたち。残り1年でイギリスロックの最高峰であるグラストンベリーの舞台に立つことができるのか。

テーマ|折れないパンク精神と田舎で得た創造的自由

本作のテーマは、折れないパンク精神です。ハナコが死ぬと信じている27歳は一つの区切りを表しています。自分たちは何もできない、何一つうまくやれない。野菜だって作れない。自分たちが作った音楽も理解されない。でも、田舎の人たちはそんなことは一切気にせずに接してくれる。不器用で障害にぶつかってきたハナコが創造的自由を得ることができたのが田舎でした。

キャラクター造形|田舎でテーマを体現するハナコ

キャラクター造形の中心はテーマを体現しているボーカルのハナコ(夏子)です。ルックスや目つきがどことなく若き日の町田町蔵を想起させます。ハナコは衝動的で落ち着いて長時間何かに取り組むことができない。そのために何もかもうまくいかないと感じています。音楽に向き合える環境、それが周りの人たちを含む田舎でした。

しかし、ある事件でハナコは曲が作れなくなってしまいます。音楽以外何もできない自分は、何のために音楽を作っているのか?それを見つけることができたのもやはり田舎でした。

映画技法|リアリティとファンタジーの融合

宇賀那健一監督は、SFやホラー作品の経験を通じて、本作もリアリティとファンタジーを巧みに融合させています。犬やカセットテープがしゃべり出すなどのファンタジックな要素も盛り込まれています。​バンドの実力や人気が非現実的なスピードで拡大していくのですが、ファンタジーを取り入れることによって、その非現実感をうまく演出しています。

またハナコが再び曲を作れるようになるきっかけのシーケンスは正方形に近いアスペクト比(おそらく1:1.33)でグレイン感の強いフィルム(風)映像となっていて、非現実感をさらに強調する演出が取り入れられています。

まとめ|田舎で見つけた音楽の新たな形

『ザ・ゲスイドウズ』は、売れないバンドが田舎での生活を通じて再生し、新たな音楽の形を見つける物語です。​個性豊かなキャラクターたちと美しい映像、そしてリアリティとファンタジーが融合した世界観が魅力的です。