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支付宝と微信のミニプログラムの違い

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この記事のポイント

  • 中国では支付宝(アリペイ|Alipay)と微信(ウィチャット|WeChat)がミニプログラムというAppleのAppStoreもGoogleのPlayStoreも必要なエコシステムを作った。
  • やっぱ、芝麻信用(セサミクレジット|Sesami Credit)すげえ。
  • すごいなあと思う反面、これってガラパゴスにならない?とも思う。

原文:"We’ve experimented with Alipay Mini Programs" by Thibault Genaitay

背景

 5億2000万の登録ユーザーを持つ支付宝(Alipay)は約60のミニプログラムを提供しています。これらのミニプログラムは以下の三つのカテゴリーに分類することができます。

  • Alipayが開発したミニプログラム
  • その他の阿里巴巴(アリババ|Alibaba)グループと共同開発したミニプログラム(例:淘宝网|Taobao、优酷|Youku)
  • サードパーティーと共同開発したミニプログラム(滴滴出行|Didi Chuxing、Airbnb、携程|Ctripなど)

ミニプログラムの見つけ方

1. 支付宝から「小程序」または「Mini Programs」で検索

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2. ミニプログラムを立ち上げると新しい「小程序」タブが「Friends」リストに作られる

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3. オフラインQRからも当然ながら

 これを念頭に置き、私たちは2017年8月末に開始された開発者向けのオープンベータをテストすることにしました。

実際に微信のミニプログラムとどう違う?

 技術的には1%くらいでしょうか、マジで。

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支付宝の小程序を開発するためのIDE

 もうすでにみなさんはあるニュースを耳にしているかもしれません。微信のミニプログラムをパクったことについて公式に謝罪をしたのです。このリリースは読む価値があります。

👉 https://zhuanlan.zhihu.com/p/28605175

「微信のミニプログラムに脱帽です」🤦

では、その1%の差はなんでしょうか?

私たちが現時点でわかっていることは…

アクセス:

  • エンタープライズアカウントのみ (ベータ期間中は個人登録はできない)
  • ベータプログラムの審査には1日かかる
  • エンタープライズアカウント一つで10個のミニプログラムを開発できる
  • 一つのミニプログラムで開発者10人とテスター50人を登録できる

開発環境:

  • IDEは先進的なプレビューモードがある:“Push to yourself”と“Push to developers”(一回で全て通知が完了)
  • スタイルは .ACSS(AntFinancial Cascading Stylesheets)に格納
  • マークアップとページ構成は .AXML(AntFinancial Markup Language)に格納
  • ESLintサポートとApplet-specific シンタックスのヒント

独自機能:

Progressive Web Appとの違い

  • ミニプログラムはキャッシュが10MB使えるので理論的にオフラインで使えるけど、実際にはAPIコールが発生するのでオフラインは難しい(PWAは大丈夫)
  • AlipayとWeChatの独自機能がウリ(PWAは無理)

プロダクトの観点

 この芝麻信用へのアクセスは大きいかもしれません。ここで芝麻信用についておさらいしましょう。芝麻信用はユーザーの信用を350から950 の得点で表します。これはクレジット履歴、買い物履歴、契約履行履歴、学歴や職務経歴書ソーシャル上のつながりで判断されます。 2015年から運営しているというアドバンテージに加えて、芝麻信用は阿里巴巴が傘下のショッピングサイトから収集している行動データがあります。

 機能的に考えるとこれは全く新しい顧客データの世界です。信用ベースのプロダクトは新しい可能性に満ちています。新しいイノベーションが起きる予感がします。

 それと同時に、マーケターも開発者も微信については一つのジレンマがあります。それはH5にするかミニプログラムにするかです。

H5とは

H5は微信のHTML5ベースのアプリです。

支付宝にはすでに多くの信用ベースのサービスがあります。デポジットが必要ないシェアバイクやバーチャルクレジットカードなどです。支付宝のミニプログラムを使うことで多くのサービスにデポジットが不要になります。
– Eva Xiao, Tech in Asia 2017年9月8日

開発者の意見

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 次に支付宝に難題を吹っ掛ける開発者の集まるフォーラムを覗いてみました。ポイントは大きく三つ。

  1. 微信のミニプログラムではできるのに、これは支付宝ではできない!
  2. 中国語のIDEがない!
  3. ファイルの拡張子とAPIの名前しか違いがないことから、微信のミニプログラムのソースコードから支付宝のミニプラグラムを作るやり方

ちょっと待って、それっていいことなんじゃ?

 もし二つのフレームワークがほとんど同じなのであれば、開発工数がすごく削減できる。iOSとAndroidの両方を開発しなければいけない手間を考えてみれば一目瞭然。

 理論的にミニプログラムを一つ開発すれば二つのプラットフォームで動かせるはず(両方ともJavascript ES6とマークアップなんだから)

まだ機能的に大きなギャップもある

 微信は支付宝が(まだ)提供していない機能がいくつかある。

  • wx.getWeRunData
  • wx.chooseInvoiceTitle
  • カスタマーサービスAPIs
  • 通知のためのメッセージテンプレート
  • ほかのミニプログラムと行き来するナビゲーション
  • WXMLノード
  • 加速度計やコンパスへのアクセス

そのほかにプラットフォームとしての魅力、ソーシャルの側面におけるすべてとカスタマーサービス!

で、これからどうなるか?

(1) 技術的な観点から言えば、WEPTのような人気が出つつあるフレームワークがプロプラエタリーなIDEより開発生産性を高め、ソースコードを素早く適用する助けになることを期待しています。

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WEPT https://chemzqm.github.io/wept/

(2) サービスの観点からは大企業、銀行、航空会社、ホテルなどのチャネルが特典としてロイヤルカスタマーにサービスを売る機会を作ると考えます。信用にアクセスできるのでデポジットが必要なくなり、優良顧客をさらに好待遇で扱うことができます。

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「ほら、900セサミポイント持ってるよ!」 => 「お客様、こちらへどうぞ」 (Photo Credit: MARK CHEONG)

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