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書評|悲観主義者の逆襲 "Falter" by Bill McKibben

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「世の中それほど悪くなってない」と考える楽観主義者と「世の中は悪くなっている」と考える悲観主義者に分けることができます。楽観主義者の代表はこのブログの書評でも紹介したハンス・ロスリングの『ファクトフルネス』スティーブン・ピンカーの"Enlightenment Now"です。そして、今回紹介するビル・マッキベンの"Falter"は悲観主義者の代表格となるでしょう。まあ、実際にはそのどちらでもない「興味があまりない」人たちが大多数なのでしょうが。

Falter: Has the Human Game Begun to Play Itself Out?

Falter: Has the Human Game Begun to Play Itself Out?

地球温暖化が一般的に議論に上がったのは1988年のアメリカ上院の公聴会でのジェームス・ハンセンの発言からです。ビル・マッキベンは同じ頃から地球温暖化の分野でジャーナリストとして活躍しているので、この分野においては超ベテランです。また、環境保護団体の350.org(日本の"350 Japan"もある)の発起人の一人でもあります。だからこそ、「世の中は悪くなってない、むしろ良くなってる」なんて楽観的なベストセラーが生まれ「ざけじゃねー!」言いたくなったのでしょう。まあ、気持ちはわかります。

この本は地球温暖化だけでなく、人工知能やDNA改造まで広範囲をカバーしています。それを一括りにして「ゲーム」としています。人類はその「ゲーム」に勝つことができるのか?が主題です。あまりにも広範囲なトピックをカバーしようとしているため、散漫な印象を読み手に与えてしまっています。ぶっちゃけ、後半は読んでいません。なので、半分だけ読んだレビューとなっています。

なぜ地球温暖化は改善されないのか?

ここでも最近はすっかり悪者が板についた新自由主義とリバタリアンが諸悪の根源として登場します。ビル・マッキベンが今回特に念入りに槍玉に挙げているのがアイン・ランドとチャールズ・コークの二人です。もちろん、個人攻撃ではなく、彼らが代表する地球温暖化の国際協力の足を引っ張る勢力ですね。

日本の場合は世界の潮流から少し外れて、新自由主義になっていません。日本の政党は基本的に大きな政府志向ですよね、自民党を含め。だから、日本のほうがアメリカと比べて地球温暖化に取り組みやすいんですかね。この本を読んでると、地球温暖化に対するアメリカの一部の層の強い拒否反応がすごいことは理解できるのですが、その心理までは理解できません。

まずは、アイン・ランド。彼女自身はリバタリアンと一線を画した「オブジェクティビズム」なのですが、ピーター・ティールをはじめ現代のリバタリアンに非常に人気の高い小説家です。しかし、何と言っても巨悪の根源は石油コングロマリットとその利益を代表するチャールズ・コーク

自動車業界に悪影響があるからという理由で公共交通機関に反対するってすごいですね。おまけに税金をたくさん収めているんだから、投票権も納税額に比例して増えるべきだなんて主張したりするんですから。お金がある人ほど影響力が行使できるアメリカの議会制民主主義の構造的欠陥はローレンス・レッシグも近著"America, Compromised"で指摘していますね(次回はこれの書評の予定)。

この本はどんな人にオススメか

内容的には悪くないといいますか、ボク自身はアメリカの影響力がある人たちについて色々知ることができてよかったです。ただ、あまり論理的な構造になっていなくて、冗長的な部分が多々あるのが欠点です。情報量は多いので、それさえ我慢できたらいいのかもしれないです。

たぶん、リベラルを自称する人たちにもオススメなんでしょうね。地球温暖化って本当に人類が全力で取り組まなければいけないので、あまり政治っぽく語るネタにしたくはないのですが。