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興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

映画評|俳優ニコラス・ケイジの本質とは何か?|"Color Out of Space" by Richard Stanley

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ボクはニコラス・ケイジが大好きです。最初に意識したのがコーエン兄弟監督作品『赤ちゃん泥棒』(1987年)でした。その前にもフランシス・コッポラ監督『ランブルフィッシュ』やシェール主演の『月の輝く夜に』に出演しているので、ニコラス・ケイジが出演した作品は観てはいました。しかし、俳優としてはっきりと意識したのは『赤ちゃん泥棒』からです。強盗のハイ(ニコラス・ケイジ)と警察官のエド(ホリー・ハンター)の夫婦が赤ちゃんを盗む話。もう、すごくダメ男なんですよ、ニコラス・ケイジが。そのダメ男っぷりにやられました。

そして、ニコラス・ケイジのもう一つの特徴が気違い染みた演技。それを決定づけたのが『バンパイア・キッス』(1989年)でした。吸血鬼になった(と思い込む)ニコラス・ケイジ。完全に狂ってます。この作品、ニコラス・ケイジ本人も気に入っている代表作なんですが、まだブルーレイになってないんですよね。これは絶対に後世に残すべき作品です!

分かっていただけたでしょうか?狂ったダメ人間。これがニコラス・ケイジの本質です。この後に売れっ子俳優となって『コン・エアー』みたいな「らしくない」映画に出演するようになります。なんか、違うだろ、お前。その役はお前じゃなくてもできるぞ。そう思った時期もありました。お前にはやるべきことがあるはずだ!

そして、その時はきました。ニコラス・ケイジの「狂ったダメ人間」の本質を理解した映画人ってたくさんいたんですね。後に『キングスマン』シリーズのヒットを飛ばすマシュー・ヴォーン監督です。ニコラス・ケイジは『キックアス』のビッグダディでリハビリ的に本来の役割である狂ったダメな父親を演じます。クロエ・グレース・モレッツ演じるヒットガールが素晴らしい。そのため、父親役のニコラス・ケイジは霞んでしまうのですが、リハビリ中なので仕方ない。ウェルカムバック!ニコラス・ケイジに育て上げられたクロエちゃんの勇姿を見てあげてください!

そして、ニコラス・ケイジが「狂ったダメ人間」として本格復帰を果たしたのが『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』でした。サイケデリックな映像、カルト教団との戦い。正義の狂人。そう、これがボクの待っていたニコラス・ケイジです!

 こうなったらニコラス・ケイジの勢いは止まりません。昨年に公開された"Color Out of Space"は前作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』の成功を受けて同じプロデューサーが集まり作られた作品です。原作はラブ・クラフトの小説『宇宙からの色』です。

"Color Out of Space"では原作には出てこないアルパカが登場します。原作では馬です。馬って役に立つじゃないですか。でも、アルパカって羊みたいに毛を刈って加工して初めて役に立つ動物なんです。かわいいですけどね。かわいいからZapposのCEOトニー・シェイみたいにペットとして飼う人もいますけどね。でも、実用的ではない。「なんの役に立つの?」と子供達に聞かれて、「乳を絞れるよ」と答えるニコラス・ケイジ。でも、誰もアルパカの乳なんて飲みません。あのアルパカはニコラス・ケイジなんですよ。ニコラス・ケイジの映画だからアルパカが必要だった。別の俳優だったらアルパカである必要はなかった。

なお、ニコラス・ケイジは次回作"The Unbearable Weight of Massive Talent"でニコラス・ケイジ役を演じる予定です。しかも、プロデューサーはニコラス・ケイジ。ニコラス・ケイジによるニコラス・ケイジの映画です。期待せずにはいられませんね!

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  • メディア: Blu-ray