書籍の中でもきちんと科学的に検証された題材を読むのが大好きです。科学的に検証されたというのは推測ではなく事実や多くの事例に基づいて論証されているという意味です。例えば社会経済学で様々な疑問に切り込んでいる『ヤバい経済学』とか進化生物学の観点からなぜ文明がある一定の場所から発生したのかを検証した『銃・病原菌・鉄』とか。
もちろん、個人的な体験をベースとしたモノローグも悪くはないですが、個人的な経験(だけ)を一般的な法則に当てはめてしまうようなアプローチは嫌いです。「好きじゃない」ではなく、はっきりと「嫌い」です。ボク個人の主観なんで、科学的じゃないから「悪い」とまでは言いませんが、「嫌い」です。
科学的なアプローチで真っ先に思い浮かぶのが数字を使ったアプローチ。数字を使ったアプローチにおいて物理学はその最先端をいってるのではないでしょうか。物理学は素粒子物理学のような目に見えないような小さなモノからダークマターやビッグバンのような途方もなく大きなものまで扱うのにその真ん中はあまり扱ってこなかった。例えば、生物、企業や都市。
物理学者のGeoffrey Westが生物、企業、都市に共通するスケールの法則の研究結果がこの著作"Scale: The Universal Laws of Life and Death in Organisms, Cities, and Companie"です。このような本は大好物です。
Scale: The Universal Laws of Life and Death in Organisms, Cities
- 作者: Geoffrey West
- 出版社/メーカー: Weidenfeld & Nicolson
- 発売日: 2018/05/03
- メディア: ペーパーバック
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スケールというのは大きくなったり小さくなったりすることですね。ここで検証されているのはネズミはスケールダウンした人間なのか?ゾウはスケールアップしたネズミなのか?どうしてネズミはゾウより寿命が短いのか?人間はスケールの法則に従えば何年まで生きられるのか?といったことです。そして、そのスケールの法則は企業や都市にも当てはまるのか?「企業のDNA」とか「都市のエコシステム」など生物や生態系に例えられるが、それは単に比喩的なものなのか、それとも何か真理を含むものなのか?
軽くネタバレしてしまうと、共通するスケールの法則はありそうです。そのキーワードは指数的な成長。サブリニア(100%増えても75%しか増えない)の成長、リニアの成長(100%増えたら100%増える)、スーパーリニアの成長(100%増えたら125%増える)です。しかし、同じ法則が当てはまるのなら、なぜ都市は死なないのか?企業は生物に似ているのか、それとも都市と似ているのか?そういった部分にまで踏み込んでいます。
すごく面白かったのは(これも軽くネタバレですが)企業は都市よりも生物に似ているので不死ではないということです。日本の1000年以上続いた企業についても言及されていますが、これは統計的には外れ値で、これは別に扱う必要があるとしています。企業が都市のようなネットワークモデルをどのように持つことができるのかはホラクラシーやティール組織、自然経営などありますが、数学的にはまだ解明されていない部分です。トップダウンのピラミッド型の組織である限り、変化に対応できずに死に行く運命は変えられない。