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Tik Tokのトウティアオ(头条)から学ぶ中国コンテンツビジネス

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アメリカの影響力のある大手テクノロジー会社をまとめてGAFA (Google/Apple/Facebook/Amazon)と言います。ドットコムバブルを生き残ってプラットフォーマーとなった世代ですね。これに続くのがリーマンショック以降に生まれたUber、Airbnb、WeWorkなどのユニコーン *1 です。中国の場合、GAFAにあたるのがBAT (Baidu:百度/Alibaba:阿里巴巴/Tencent:腾讯)です。中国のプラットフォーマーですね。そして、それに続く中国ユニコーンがTMD (Toutiao:头条/Meituan-Dianping:美团点评/ Didi:滴滴出行) です。これに小米(Xiaomi)も加わります。

中国ユニコーンの中でも美团点评と滴滴出行は比較的わかりやすいかと思います。美团点评はGrouponとYelp(日本だと食べログ)を組み合わせたようなもので、滴滴出行はUberですね。日本と同じで欧米の成功したスタートアップのモデルをその国独自にアレンジして展開しています。そして、头条(以下、トウティアオ)と小米は中国で生まれたユニークなモデルだと言えます。今回はトウティアオの歴史から中国のコンテンツビジネスを学んでいきましょう。

トウティアオとは

まず、そもそもトウティアオって何?ってところから。口パクに合わせてかっこいいショートビデオが作れるTik Tokが日本でも10代に人気がありますが、これを作っているのがトウティアオです。同様のストリーミングサービスのMusical.lyもトウティアオが買収しています。昔は中国スタートアップが欧米のスタートアップをパクっていましたが、いまではFacebookがTik Tokをパクるようになるのですから時代は変わりました。ちなみに中国での企業名は北京字节跳动科技有限公司(英語名:Bytedance Technology)です。

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トウティアオの作っている人気アプリ(クレジット:GGVCapital)

一番多く利用されているアプリはジンリトウティアオ(今日头条)。日本で近いサービスはグノシーとスマートニュース。ディープラーニングを使っている点も類似性があります。日本でもTopBuzzやBuzzVideoというアプリが使えるので試してみてください。

トウティアオと他の中国ユニコーンの最大の違いは創業者の失敗歴でしょうね。メイトゥアンにしてもシャオミーにしても創業者は前の事業で成功しています。はじめての成功じゃないのです。しかしトウティアオは長い失敗の繰り返しから生まれました。

トウティアオ創業前:転職と失敗の繰り返し

トウティアオの創業者はジャン・イーミン(张一鸣)です。トウティアオを創業する前のジャン・イーミンを一言で表せば転職を繰り返す「ジョブホッパー」でした。彼自身は毎日夜中の1時まで働くハードワーカーでしたが、当時は運がなかったんでしょうね。

ジャン・イーミンは2005年に天津の南开大学 *2 を卒業して企業向けのシステムを開発する会社を起業しますがこれは失敗します。次にクーシュン(酷讯)という後にTrip Adviserに買収されるスタートアップに最初期のエンジニアとして入社します。ここではすぐに頭角を現し、二年目にして40人以上のバックエンド開発者のマネージャーに昇格したそうです。

次に中国マイクロソフトに転職しますが、すぐに辞めて中国版Twitterのファンフォウ(饭否)に参加します。このファンホウは中国版Facebookであるレンレンワン(人人网)ですでに成功し、後にメイテュエン(美团)を創業するワン・シン(王兴)が作ったスタートアップでした。

しかし、2009年ウイグル騒乱での言論統制に巻き込まれてファンフォウは政府の命令で強制終了。政府に協力的なライバルのウェイボ(微博)が躍進します。ワン・シンも「スタートアップは政治的に敏感な部分に触れてはいけない(创业公司不该碰政府敏感领域)」という教訓を学びました。ジャン・イーミンはなかなか運に恵まれませんね。ファンフォウがシャットダウンしてから、不動産テックのジウジウファン(九九房)を自ら起業しますがこれも失敗。

2012年5月に5度目の挑戦としてネイハンドゥアンズ(内涵段子)を開発してリリースします。このサービスの評判に手応えを感じ、同年8月に北京字节跳动科技有限公司を創業してジンリトウティアオ(今日头条)をリリースします。ジャン・イーミンが大学を卒業して7年目のことでした。長かった!

トウティアオの成功

当時はスタートアップの投資は中国に集中していました。成功しているアプリであれば資金調達はそれほど難しくなく、ジャン・イーミンもジンリトウティアオをリリースしてすぐに500万ドル(約5億円)をシリーズAで調達します。

初期のジンリトウティアオはインターネットから記事を探して機械学習でユーザーが好むコンテンツを表示する比較的単純なアプリでした。パーソナライズもありませんし、画像の表示もありません。モバイルに特化したニュースアプリの先駆けはFlipboardで、表示の美しさに重点を置いていました。ジンリトウティアオが重視したのは見た目の美しさではなく、コンテンツの消費しやすさだったそうです。

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初期のジンリトウティアオの画面(クレジット:百度)

当時の中国メディアはまだモバイルに最適化したコンテンツを独自で作っておらず、ジンリトウティアオがそのギャップを埋めることになりました。その結果、リリースから四ヶ月で1日のアクティブユーザー(DAU)が百万人になります。

コンテンツプラットフォームとAI

アプリにとって大事なのは使い続けてもらうこと。そのためにジンリトウティアオは継続して頻繁にアップデートを行います。機械学習による レコメンデーションやパーソナライゼーションなど次々に実装していきました。当然ながらジンリトウティアオの成功をみて多くの競合が立ち上がりました。しかし、機械学習やディープラーニングはデータ量が重要となります。初期に多くのユーザーを獲得したジンリトウティアオに追いつくのはなかなか至難の技でした。

Tik Tokを含め、トウティアオの様々なサービスはコンテンツプラットフォームです。しかし、そのコアとなる技術はディープラーニングなどAIです。トウティアオではコンテンツのキュレーションだけでなく、作成もAIで行なっています。2016年のリオオリンピックではAI記者のXiaomingbotで約2週間のオリンピック期間中に、AIが作成した記事を450本配信しました。

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Xiaomingbotのスクリーンショット(ソース:百度)

AIの記事自動作成はイスラエルのArticooloが有名ですが、これほど大規模に実運用したのはトウティアオがはじめてではないでしょうか。次の東京オリンピックでは日本のスタートアップに頑張ってもらいたいところです。

このような努力の甲斐もあり、トウティアオの売上は急速に伸びました。立上げから4年の売り上げではGoogleやFacebookだけでなく、同じ中国のテンセントやバイドゥより早いことがわかります。

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トウティアオの立上げから4年の売上の伸びはGoogleやFacebookより早い
(ソース:Y Combinator)

C2Cプラットフォームと動画への注力

最近のトウティアオは特に動画コンテンツに力を入れています。ニュースアプリのジンリトウティアオもかなり動画コンテンツが多いですし、Tik Tokなど新しいアプリは全て動画に注力しています。リップシンクもAIが活躍する分野ですよね。最近の評価はグノシーやスマートニュースのようなAIを使ったニュースアプリではなく「動画+人工知能」だと思います。

参考文献

张一鸣:今日头条不模拟人性,也不引导人性,你们文化人给了我们太多深刻的命题-虎嗅网

张一鸣:我遇到的优秀年轻人的5个特质

如何评价「字节跳动」创始人张一鸣? - 知乎

“饭否”创业失败的教训 – 【人人分享-人人网】

拿下中国人工智能最高奖 今日头条写稿机器人有哪些黑

The Hidden Forces Behind Toutiao: China’s Content King

My conversation with Zhang Yiming, founder of Toutiao · TechNode

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*1:10億ドル以上の資産評価がされている非上場企業

*2:中国の六大学である国家重点大学のひとつ