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書評|デザイナーのための気の利いた豆本|A Book Apart

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Photo by picjumbo.com from Pexels

ボクの社会人としての原点はサービスデザイナーです。その前にマーケティングもやっていましたが、自分のプロフェッショナルとして定義をする根っことなったのはサービスデザインでした。いまはさすがに自分自身ではデザインをしませんが、それでも出来上がってくるアプリのUXなどはチェックします。

職業としてのデザイナーの定義はあいまいです。試験とか資格とかないので、誰でも自称デザイナーになれてしまいます。スタンフォード大学のd.schoolのような学校もないですしね。ボクなんかもちゃんとした教育を受けたことはないので、「なんちゃってデザイナー」なのかもしれません。とはいえ、ボクがはじめた頃はペルソナとかカスタマージャーニーマップとかツールがそろっていなかったので、独自で工夫するしかありませんでした。UXの世界に決定的に影響を与えた書籍"The Psycology of Everyday Things"(現在は"The Design of Everyday Things"に改名/日本語訳は『誰のためのデザイン?』)だって、世に出たのは1988年ですし、ペルソナを世に広め、インターフェースデザインに影響を与えたアラン・クーパーの"About Face"も1995年です。いま現在、日本でどれだけデザインについて学ぶ場所が提供が提供されているのかはよくわかりませんが、みんな試行錯誤しながらツールや方法論を作り上げてきました。ボクもそうです。

それにしてもです。デザインをレビューするときに「もうちょっと基礎を知っておいてくれよ、基礎が確立されて少なくとも10年は経つんだから」と感じる場面が多々あります。見た目はきれいなんですよ。でも、直感的に使えない。FigmaとかZeplinとかNotionとか、Framerとかそういうツールを使うのは慣れている。オンラインのチュートリアルも充実してるし。まあ、モダンなツールを使えるに越したことはないのです。しかし、肝心のデザインの知識や経験が足りていない。「こればっかりは経験を重ねるしかない」という意見もあると思いますが、正しい知識は正しく教わらないと無駄に遠回りになってしまいます。寿司屋とか職人じゃないんだから(寿司も本当は体系立てて学べるとは思いますが)。

そういう時に若いデザイナーたちに渡すのがA Book Apartの本です。英語の本ですが、日本語でこれくらい基礎知識が分野別にコンパクトにまとまってるシリーズはないので。

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最近買ってデザイナーたちに手渡したのは"Conversational Design"と"Everyday Information Architecture"です。Conversational Designとはどうやってデザインを通じてユーザーと対話をするかです。Maxims of Violationsのような重要なコンセプトが紹介されています。情報アーキテクチャの手法も大規模なWebサイトを作る上では日本でも活用されはじめていますが、アプリのデザインでは使われていなかったりします。LATCHがすべてじゃないですが、せめてLATCHとは何で、どうやって使うのかくらい知っておこうよ、マジで。

A Book Apartの本は現時点でVol. 31 Expressive Design Systemsまで出ています。それぞれ100ページ強の軽い本ですが、ひとつの分野にフォーカスしているため、総合的な分厚いデザイン本一冊より各テーマについては深堀されています。こういう、軽くてサクッと読める本が日本語でもあるといいんですけどね。日本のデザイナーは日本語だけでは情報的には一周半くらい遅れてしまうので、常に最新の英語の資料に触れておきたいものです。Webコンテンツだと薄いので、A Book Apartくらいのコンパクトな豆本がちょうどいいと思います。