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スタートアップの最後のフロンティア?|2018年建設関連コンストラクションテック

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スタートアップでよく言われるのは地味な産業の地味な問題を解決しろです。競争相手が少ないのが一つ、本当に困っているからお金を払ってもらえるのが二つ目の理由です。以前に通っていた歯医者さんに「歯科向けのソフト開発しなよ、絶対売れるから」と言われていました。作らなかったけど、作ってたら売れたのかなあ。

建設は地味だけど大きな市場で無駄がたくさんある産業の代表例です。アメリカでは600万人が建設業界に携わっていて、毎年1兆円規模のプロジェクトを行なっています。

 

 

建設業界の課題

建設業界は金融業界と並び、スタートアップにとってはロマンあふれる市場です。いや、本当ですよ。マッキンゼーによると2030年までに57億ドル(約6400兆円)のインフラ投資が必要になります。また、建設業界は非効率的な産業で納期の遅れと予算オーバーが常態化しています。デジタル化が遅れていて、「紙が一番の競合」と言われたりしています。世界の生産性の平均は35ドル/時間ですが、建設業界の平均は25ドル/時間です。これにより1兆6000万ドル(約180兆円!)の生産性のギャップが一年間で発生しています。

じゃあ、具体的にどれくらいの資料の量なのかというと、平成29年度の国土交通白書によると、約14ヶ月の橋梁下部工事の場合、資料の厚みが3メートル以上(360cm)だったそうです。それを削減してもまだ1メートル以上(納品資料:53cm/提示資料:112cm)あるんだからすごいですね。それでもこれまで半分以上削減したのだから大したものです。

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国土交通省 i-Constructionの推進状況 2018年6月1日 第3回企画委員会 資料-1

多くの資料や検査が必要なのは仕方がない部分があります。建物や道路など公共のインフラを作るのには安全が第一です。長く使うものですしね。しかも、設計、調達、施工、管理のそれぞれの段階で多くの関係企業や省庁がかかわってきます。プレーヤーが多いのです。

建設業界デジタル化の潮流

コンストラクションテックはAutodeskの主戦場です。設計はまずAutoCADですからね。そして、今は設計情報のデータベースとも言えるビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)の時代ですね。建設データのデジタル化が全体的なトレンドです。この分野で大きなシェアを持っているのはArchiCADとAutodeskのBIM 360です。

しかし、当然ながら大手だけでどうにかなる市場ではないので、多くのスタートアップがシェアを求めて挑戦してきています。日本でも富士通とかNECとか日立とか大きなところが幅を利かせている市場ですが、スタートアップが寄り付かないのが海外との違いです、残念ながら。

建設市場へのテックの挑戦

建設市場は成長が見込まれる市場なので投資も集まっています。投資が集まるということはスタートアップも参入しますし、ユニコーン(10億ドル以上の資産評価される未公開企業)も生まれます。

サービスとしての建設:Katerra

ここ最近、大きな資金調達をして話題を集めているのがKaterraです。シリーズDでSoftBank Vision Fundから8億6500万ドルを調達しました。30億ドルの資産評価でユニコーンの仲間入りをしました。中国の自転車レンタルサービスのOfoがそれくらいの資産評価だったと思います。

Katerraはソフトウェア会社というよりは建設業界に特化したサービスプロバイダーです。自社工場で部品を製造し、組み立てを行い、建設現場に資材を届け、施工まで行います。全てのプロセスを一社で行うのです。

ソフトウェアを使いこなすには時間がかかりますし、プレーヤーが多いとなおのことです。だったら、自分たちでソフトウェアを使いこなして、全部やっちゃえ!というアプローチですね。建設業界でもモノからサービス、ソフトウェアからサービスへの移行が進む可能性がありますね。

コンストラクションテックのパイオニア:Procore

この市場の可能性に早くから気づいて、2002年に創業したのが建設に特化したプロジェクト管理のProcoreです。シリーズGまで進んでいて、10億ドルの資産評価を受けたユニコーンでもあります。CDNのCloudflareやアドテックのInMobiと同じくらいの資産評価ですね。

BIMがデータの管理だとしたら、Procoreコラボレーションソフトですね。創業者でCEOのトゥーイ・コートマンチは自宅の建設中に設計チームとコミュニケーションをするのが大変だった経験から創業のアイデアを得たそうです。

Procoreくらい存在感が出てくると、Autodeskとしても無視できないようで、色々とぶつかっているようです。一方でRhumbixには投資してるので、組めるところは組む、組めないところは徹底的に戦うということなんでしょう。

Y Combinator卒業のエリート:PlanGrid

コンストラクションテックに一番投資をしているのが何を隠そうY Combinatorです。そしてその卒業生の代表選手がPlanGridです。その名が示す通り、ブループリント(設計図)を共有するサービスです。ブループリントは変更が多いデータで、紙で全てをトラッキングするのは非常に困難でした。全部をやろうとせず、一番困っているニッチな部分を探すのって大事ですよね。

PlanGridも2015年にシリーズBで5000万ドルの資金調達に成功しています。

建設業界でのAR/AR活用:Scope AR/Yulio VR

AR/VRって建設業界で活かせそうですよね。実際にそう考えるスタートアップは多くて、スタートアップがたくさん参入しています。主なユースケースはトレーニングとデザインです。

Scope ARはARを使って現場のスタッフに適切な情報や指示を送ることができます。マイクロソフトのHoloLensを使っています。こちらもY Combinator卒業生。

YulioはVRを使ったショールーミング。CADのデータを取り入れてVR環境を作ります。Webやアプリの開発ではInVisionのようなプロトタイプツールで開発前にどのようなUXなのかをデザイナーと開発者で共有することができますし、クライアントにプレゼンテーションもできます。Yulioはその3D版という感じですね。同様のサービスにIris VRもあります。

建設業界での人工知能(AI)活用:Smartvid.io/Doxel

BIMで建設データをデジタル化したら、それを分析したくなりますよね。そして、分析できるということは人工知能を使える場面も増えるということです。

Smartvid.ioは建設業界に特化した画像解析のAIです。現場で撮影され、BIMに登録された写真や動画に自動的にタグ付けをして管理を容易にします。Adobe SenseiがストックフォトサービスのAdobe Stockでやっていることの建設特化版ですね。シリーズAで1000万ドルの資金調達に成功しています。

Doxelも同様に建設業界に特化した画像解析AIですが、自律走行ロボットを活用して画像を収集するというところが新しいアプローチになっています。

ただ、ドローンを使った画像解析サービスのAirware130億円を溶かして壮大に破綻したので、独自のハードウェアはちょっと注意が必要ですかね。どこまで汎用品を使い、どこまで専用のものを開発するかの見極めは大事です。