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Amazon Goに代表されるレジなし店舗の現状|2018年リテールテック

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Amazonがレジに並ばずに自動的に支払いを完了できるAmazon Goのベータを社内にオープンしたのは2016年12月でした。そして、一般顧客を対象とした一般公開を2018年1月におこないました。2018年はレジなし店舗元年となりました。

レジなし店舗の特徴

チェックインとチェックアウト

非常にざっくりと言ってしまえば、レジなし店舗の特徴は支払いの時にレジで並ばなくて済むことです。その代わり、入る時に駅の改札のようなゲートでチェックインする必要があります。レジでの支払い(チェックアウト)の方が時間がかかるので、チェックインが少し手間でも全体的には効率的になっています。

  • レジがない(自動チェックアウト)
  • 入り口でアプリを使ってチェックイン

チェックインをするのは入店する個人を認識するためです。チェックインすることで個人の買い物カゴが開かれます。棚からとった商品が買い物カゴに移動します。家族で買い物をする場合、一人のアカウントでチェックインすることもできます。その場合、複数の人がチェックインした人の買い物カゴを開いている状態になっています。

子供もチェックインしなければいけないので、小さな子供の場合は少し面倒かもしれませんね。

商品ラインアップ

スーパーマーケットで扱う商品は大きく分けて「ウェット」と「ドライ」があります。「ウェット」は生鮮食料品です。野菜、肉や魚ですね。「ドライ」はグローサリーのようなパッケージ商品です。日本やアジアのスーパーマーケットはウェットの取り扱いが多いという特徴があります。

レジなし店舗ではグローサリーのようなパッケージ商品が対象になります。生鮮食料品は取り扱っていません。生鮮食料品の場合は量り売りだったりするので、センサーでのトラッキングが難しいのかもしれません。生鮮食料品を家庭で調理をするような人たちはパッケージ商品を消費する人たちよりも効率性を求めていないのかもしれません。

いずれにせよ、チェックインした人が手に取った商品は買い物カゴに入ります。人と商品を結びつけるわけですね。気が変わって商品を棚に戻せば買い物カゴからもなくなります。

買い物の不便なルール

レジなし店舗は新しい技術なので、技術やUXがまだ成熟していない部分があります。そのため、レジなし店舗にはレジあり店舗にはないルールがあります。

まず、店舗の中では買い物カゴの中身を見ることができません。どの商品が買い物カゴに入っているか確認することができないんです。これは不便というより不安ですよね。

次に店舗内ではチェックインした人同士で商品の受け渡しができません。例えば、AさんがBさんに「あの商品を取ってきて」とお願いしたとします。商品を手に取ったのがBさんなので、この時点でその商品はBさんの買い物カゴに入っています。商品自体はAさんに渡すことはできますが、Bさんの買い物カゴに入っているので、Bさんに課金されます。

家族や友達と一緒に行く場合はAmazon Goのアプリを持っている人が持ってない人をチェックインすることができます。例えばお父さんとお母さんと子供が買い物に行くとします。お父さんとお母さんはアプリを持っていますが、子供はアプリを持っていません。そこで、お父さんかお母さんのアプリで子供をチェックインして店舗に入れるのです。これはこれで面倒ですよね。

2018年10月現在ではこんな感じなのですが、これは徐々に改善されるだろうと予想します。

利用されている技術

Amazon Goを含め、多くのレジなし店舗で使われている技術の詳細は公開されていません。センサーとカメラで情報収集をして、センサーフュージョンで統合されます。データ分析にはAIが利用され、裏では人間がAIを学習させています。

現時点での注力は実際に店舗から持ち出された商品がチェックインした人に正しく紐付けされているかでしょう。それがある程度できるようになったら現時点では技術的に実現できていないUXの問題を解決していくと予想します。

レジなし店舗のプレーヤー

Amazon Goは間違いなく先頭を走っていますが、まだまだ新しい取り組みです。追いつけると考えるスタートアップも投資家もたくさん現れています。Amazon Goを含めて全てのレジなし店舗の取り組みに言えることですが、技術やUXはまだ成熟していないので、現時点でどれが有力だと言い切ることはできないと思います。

BingoBox

中国のBingoBox(缤果盒子|ビングオフーズ)はすでに300店舗を運営しています。Amazon Goとは若干違う技術構成でRFID(無線タグ)を利用しています。チェックアウトも自動ではなく、キオスクで行われます。技術的にはユニクロやGUと同じです。

これはBingoBoxの起業が2016年で、Amazon Goの発表前だったことが起因しています。Amazon Goの登場以前はRFIDがバーコードに置き換わる商品トラッキングと見られていましたが、コストが高いことがネックとなっていました。

クレジットカードではなくAlipayとWeChatをサポートしているところが中国ならではですね。AlipayとWeChatの特性を活かして、ミニプログラムになっています。

現在ではRFIDよりもカメラによる画像解析が有望だと考えられていて、BingoBoxも画像解析を含めたセンサーフュージョンに力を入れ、Fan AI(小范|シャオファン)を開発しました。

Standard Cognition

日本でも事業展開を発表したStandard CognitionはAmazon Goの競合の中ではビジネス的に先行していると言えます。2017年に創業ですが、無人店舗の研究自体は2016年から行っていたそうです。1000万ドルの資金調達をしています。

基本的な技術構成はAmazon Goと同じでカメラとセンサーで収集したセンサーフュージョンのデータをAIで分析します。違いはStandard Cognitionはセンサーの設置場所がAmazon Goより少ないことだそうです。Amazon Goでは棚に重量センサーなどが付いていますが、Standard Cognitionは天井だけなので複雑さを解消しているそうです。

Standard Cognitionは独自店舗のStandard Marketをサンフランシスコでオープンしています。これはAmazon Goのシアトル店舗よりも若干大きい店舗のようです。下のイメージビデオでは店員が商品とり顧客に渡していますが、店舗内での人から人への商品引き渡しの問題をStandard Cognitionは解決しているのでしょうか?

Zippin

Zippinもサンフランシスコでレジなしの実店舗を運営しています。元々は商品と追跡システムを2014年から開発していたようですが、その経験を活かしてレジなし店舗のマーケットに2018年に参入しました。

基本的な技術構成はAmazon Goと同じでカメラとセンサーで収集したセンサーフュージョンのデータをAIで分析します。棚の重量センサーにより重きを置いているようで、アパレルなど重量の軽い商品には向いていないようです。

Inokyo

Standard Cognitionと同様のY Combinator卒業生であるInokyoもサンフランシスコでレジなしの実店舗を運営しています。Inokyoの場合は画像解析により重きを置いているようで、棚にもカメラがついています。

InokyoはUXに力を入れていて、技術的な問題ではなくUXの問題を解決するためにあえてチェックアウトゲートを設けて明示的にユーザーがチェックアウトできるようにしています。

 

参考文献

Examining the User Experience of Amazon Go Shopping — Just Walk Out