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映画評|『ロボット・ドリームズ』パブロ・ベルヘル監督(2023年)

パブロ・ベルヘル監督のアニメーション作品『ロボット・ドリームズ』の映画評です。前作『ブランカニエベス』(2012年)は白黒のサイレント映画で白雪姫が闘牛士として登場するというなかなか個性的な作品でした。今回はアニメーションに初挑戦なのですが、声のセリフがないという点は前作と共通した部分。サラ・バロンが2007年に発表した同名グラフィックノベルが原作。80年代のニューヨークが舞台。

人間ではなく動物たちが住む80年代のニューヨーク。そこではコンパニオン的なロボットも生活の中に入り込んでいる。主人公は犬とロボット。この世界では名前がない。孤独な独り暮らしの犬はさみしさを紛らわすためにロボットを買う。ニューヨークで仲良く暮らす二人だったが、海水浴でロボットは動かなくなり……という話です。タイトルの『ロボット・ドリームズ』は動けなくなったロボットが見る夢を指しています。


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セリフが全くないのですが、ちゃんとキャラクター造形ができている。犬の控えめな性格やロボットのやさしい性格にとても好感が持てます。好感が持てるがゆえに会えない二人がかわいそうになるし、感情移入もできます。でも、長い間離れ離れになればお互い変わってしまう。これが本作のテーマなのでしょうね。日本やディズニーのアニメーションのような派手さはなく、素朴な感じがキャラクターにもフィットしています。ただ、そこが単調さにつながってしまっている面もある。

今年のアニメーション作品は藤本タツキの同名マンガが原作の押山清高監督『ルックバック』(2024年)がとても良かったのでどうしても比べてしまう。原作が違うので比べても仕方がないのですが、おなじ「心に触れる」作品であり「シンプルな作画」なのに作品強度としては『ルックバック』のほうがはるかに高いと感じてしまった。もちろん、『ロボット・ドリームズ』のほっこりとした感じもそれはそれでいいのだけれど。

ルックバック