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書評|人見知りのためのネットワーキング指南|"Taking the Work Out of Networking" by Karen Wickre

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昔から異業種交流会のような新しい出会いの場はありました。インターネットの時代になり、特定の興味を持った人たちが集まるイベントやコミュニティーを見つけることが容易になりました。Facebookグループやイベント検索、海外ならMeetupEventbrite、国内ならDoorkeeperPeatixなどのイベントアプリが人気です。ボクは国内外を問わず、出張に行く時はこのようなアプリで現地イベントを事前に探しておきます。現地の人たちとネットワーキングするためです(もちろん、美味しいレストランやバーも調べて事前予約しておきます!)。

今でこそネットワーキングは苦になりませんが、最初はどうしたらいいのかわからなかったし、なかなか見ず知らずの他人に声をかけられませんでした。元々は内向的な人間(イントラヴァート)で、一人でいることを好む性質なんです。人とのつながりが大切な社会でネットワーキングは重要なスキルなのですが、内向的な人間にとっては苦痛です。今回紹介する"Taking the Work Out of Networking"は内向的な人間のためのネットワーキング指南書です。紙媒体より先にKindle版とオーディオブック版が出たので、Scribdのオーディオブック版を聴きました。

Taking the Work Out of Networking: An Introvert's Guide to Making Connections That Count

Taking the Work Out of Networking: An Introvert's Guide to Making Connections That Count

著者のカレン・ウィッカーはドットコムの初期から活躍する編集者で従業員がまだ500人ほどだった頃のGoogleでも働きました。

シリコンバレーでネットワーキングが必要な理由

カレン・ウィッカーが定義する現代のネットワーキングは「特に必要な情報を獲得するため、多くの人と出会うための能動的な活動」です。

ネットワーキングの必要性は日本だとあまり理解できないかもしれません。ボクがシンガポールとアムステルダムでスタートアップをしていた時には、たくさんのネットワーキングに参加しました。そうしないと生きていけないからです。日本と違って、海外では一つの会社に三年いれば長い方。スタートアップであればいつ潰れてもおかしくない。日本と比べて生活基盤は非常に脆弱です。

仕事を変えたい、仕事が欲しい、仕事の仲間を見つける時に必要なのが人脈です。日本人は一つの企業に長く勤める傾向があるので、社内人脈が重視されます。しかし、海外では常に環境が変わるので、社外人脈が大切なんです。そのためのネットワーキングです。日本でLinkedInが流行らない理由の一因は社外人脈を重視しなくてもいい日本独自の環境にあるのかもしれませんね。

ネットワーキングは必要だけど苦痛

では、海外の人は日本人と比べてネットワーキングが好きかといえば、そんなことはありません。自分自身を偽らないといけないから、ネットワーキングは苦手な人が多い。ボクもそうですが、特に内向的な人たちはネットワーキングに苦手意識があります。

それでも内向的な性格はネットワーキングに活かせる場合もあるとカレン・ウィッカーは指摘します。例えば観察力や傾聴力。コミュ力がなくて話すのが苦手でも(話すのが苦手だからこそ)他人を観察して、他人のことを聞くことができます。また、内向的な人はオンラインでのゆるいコミュニケーションが得意だったりもします。

イントラヴァートの特徴

まずは言葉の定義。イントラヴァートは必ずしも「内気(シャイ)」ではありません。コミュ障でもありません。外向的(エクストラヴァート)な人は外との関わりからエネルギーを得ます。内向的(イントラヴァート)な人は自らの中からエネルギーを得ます。他人と関われないのではなく、他人と関わってエネルギーを使った後に、自らの中でエネルギーを充電し直さないといけないのです。また、沈黙が苦にならないのもイントラヴァートの特徴です。会話に加わっていないのではなく、会話を聞き、それを自分の中に吸収しているのです。そうして会話の糸口を探ります。

内向的な自分自身を変える必要はなく、内向的な強みを活かすことです。そのためには、大きく3つの原則があるそうです。

  1. まず、質問する
  2. 質問する準備をしておく(緊張しないように心の準備) 
  3. 観察する(「そのメガネいいね」とか、言える)

ネットワーキングのコツ

ネットワーキングも量より質だそうです。その質は「意味のある会話」だったり「インスピレーションが得られる」だったり自分自身で定義します。また、得られることだけを考えないことも重要です 。相手をATMのように扱わない。相手に与えないといけません。

ボク自身も海外生活が長いため、いろんなアドバイスを求められることが多いし、紹介されたりします。多くの場合、喜んで時間を取るし、アドバイスもすれば、人も紹介します。ただ、ガッカリするのはそのあとのフィードバックがないこと。アップデートもなくある日また「困った」が来る。これが続くとさすがにげんなりしてきます。

ゆるいつながりと軽いタッチ

ネットワーク理論で「ゆるいつながり」を提唱したのはマーク・グラノヴェッターです。カレン・ウィッカーはこの「ゆるいつながり」がネットワーキングで重要だと説きます。最初に言ってた「量より質」と矛盾するような気がしますが、質の低いコミュニケーションを多くの人とやっても仕方がないけど、多くの人と緩やかに質の高いコミュニケーションをするのがネットワーキングのコツだということでしょう。これを「ゆるいタッチ」と定義しています。「ゆるいつながり」を広げ、質の高いコミュニケーションを維持する「ゆるいタッチ」の11のガイドラインを紹介しています。すべてをここで紹介しませんが、「ちゃんとフォローアップする」とかネットワーキングに限らずにコミュニケーション全般で重要なことが挙げられています。

この本はどんな人におすすめか

イントラヴァートは最近よく目にするキーワードです。日本語で言えば「内向的」なんですが、決して人が嫌いなわけではないのだけれど、自分の殻に閉じこもりがちの人たち。まあ、実はボクもそうです、なかなか信じてもらえませんが。

この本で書いてあるアドバイスは一か所にとどまらない環境が前提になっているので、日本の環境とは若干異なります。ただ、コミュニケーションのアドバイスとしては至極当たり前のことが書かれているため、コミュニケーション指南書としては十分その機能を果たすでしょう。外国人とコミュニケーションをとることが多い人は読んでおいて損はないと思います。