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イノベーションとディスラプションの違い|アメリカの有名ベンチャーキャピタリストの考えるトレンド

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アメリカには多くのベンチャーキャピタルがあり、有望なスタートアップに投資をして、IPOやM&Aなどで投資で得た株式などを売却することで多くの利益を出しています。ベンチャーキャピタル自身が大きな資金を持っているわけではなく、機関投資家などから資金を集め、それをスタートアップに投資をします。実際に株式を売却できるほど大きくなるスタートアップの数は少なく、ベンチャーキャピタルのクライアントにとってはハイリスク/ハイリターンの投資です。

投資を回収するには有望な技術やトレンドについて常にアンテナを張り巡らせてなければいけません。ベンチャーキャピタルにとっては信頼性が大切ですし、信頼されるためには投資の回収実績を上げなければいけません。マーク・アンドリーセンとベン・ホロヴィッツによるアンドリーセン・ホロウィッツ(最初のAと最後のZの間に16のアルファベットがあるためにa16zとして知られる)は、クライアントからもスタートアップからも信頼されているベンチャーキャピタルの一つです。

a16zは技術トレンドやスタートアップに関するポッドキャストを配信しています。ベンチャーキャピタルのユニオン・スクエア・ヴェンチャーズの共同創業者であり有名ブロガーでもあるフレッド・ウィルソン(画像の写真右)とのインタビューが興味深かったので、そのサマリーを抄訳として紹介します。インタビューの相手は暗号化通貨に強いa16zのクリス・ディクソン(画像の写真左)です。

イノベーションとディスラプションの違い

  • 技術的なイノベーションは常に出てきているが、イノベーションがディスラプションに繋がっていない
  • 例えばモバイル前とモバイル後では人気のあるWebサイトはそれほど変わっていない。Facebookがいい例。モバイルというイノベーションはFacebookを破壊せず、モバイルを取り入れたFacebookはより強固になった。
  • ディスラプションは既存のビジネスモデルを破壊することによって起きる。Googleは広告をビジネスモデルにした。それまではライセンスで課金されていたのが、広告で無料になった。
  • ビジネスモデルが変わると全てが変わる。それまでの強みが弱みになり、新規参入がしやすくなる。
  • 暗号化通貨(クリプト)など暗号化技術はディスラプションを起こす可能性がある。それは単に技術の変革ではなく、ビジネスモデルの変革だから。これまでの広告やサブスクリプションのような既存のビジネスモデルではなく、トークンのビジネスモデルになる。

革新的なイノベーションとディスラプションの要素

  • 革命的なことが起きるには重要な要素が揃っていることが必要。インターネットの場合はブロードバンドだった。モバイルの場合はiPhoneだった。暗号化通貨(クリプト)にはまだ重要な要素が揃っていない。
  • クリプトが本当に利用されるには本当の意味での分散化を実現しなければならないし、セキュリティーも高めないといけない。そして、ATMネットワーク程度の処理能力を持たないといけない。これはインターネットにはブロードバンドが必要だったのと同じ。
  • その理由でNFT(代替不可能なトークン)には投資しているが、DEX(分散化した取引所)にはあまり投資していない。長期的にクリプトは有望だが短期的にはクラウド(特に開発者とエンタープライズむけのSaaS)の方が投資先としては有望。

暗号化通貨(クリプト)に期待すること

  • 暗号化通貨の世界はもっと新しい資金の市場が生まれることを期待している。もちろん、詐欺の横行など問題になってるのは理解している。それでも、これまでベンチャーキャピタルの市場の中に入れなかった普通の人たちが投資家として参加できるのは素晴らしいこと。これはスタートアップにとってもにとっても良いこと。
  • 多くの人は投資としてのクリプトと利用としてのクリプトを二つに分けているが、これには反対。投資するにはユーザーである必要がある。FacebookのユーザーがFacebookを作り、YouTubeのユーザーがYouTubeを作っているのに、投資に参加できない。これはおかしい。
  • Twitterが大きくなるときにクリプトがあったら、きっと取り入れてただろう(フレッド・ウィルソンはTwitterの初期からの投資家で『ツイッター創業物語』にも登場します)。

  • インターネットの初期の頃はインターネットで置き換えるオフラインのものに投資していた。オンラインニュースとか、オンラインショップとか。オンラインほにゃらら。これはあまり賢いやり方ではなかった。インターネットネイティブなものに投資しなければいけない。クリプトの場合はクリプトネイティブなやり方を見つけないといけない。

クラウドはまだまだいける(特に開発者向けとエンタープライズ)

  • 開発がさらに楽になるようなSaaSは多くの余地が残されている。例えばStripeのおかげで決済を組み込むのが簡単になった。Twilioのおかげでテキストを組み込むのが簡単になった。もっとあると思う。
  • 投資が活発なのはエンタープライズSaaSの分野。FacebookやYouTubeのようなB2Cは当たれば何百倍にもなって派手だけど、その数は多くない。B2Cの場合は勝者総取りで、トップと二番手の間には10倍以上の差がある。B2Bも同じだけど、トップと二番手の差は3倍くらい。
  • AIが仕事を奪うというけど、クラウドの方がもっと奪う可能性がある。例えば、給与支払いのクラウドはこれまでの社内システムの開発者や給与に関わっていた人たちの職を奪う。すぐに目に見える形ではないけど、気づかないうちに必要なくなっている。