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インターネットのビジネス再入門|前編:インターネットの広告をちゃんと理解する

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インターネットが道路だとしたら、広告は燃料です。GoogleもFacebookもYouTubeも広告がなければ存在できません。インターネットはマグロのようなもので、動いていないと死んでしまいます。それを動かしているのが広告です。この意味においてAppleやAmazonのようなモノやサービスも広告に依存しています。インターネットという道路に交通量(トラフィック)がなければAppleもAmazonも何も売れないからです。

インターネットのトラフィックは大きく分ければ以下の四つに分けることができます。

  1. 検索
  2. ソーシャル
  3. 広告
  4. 直接リンク

1) 検索と2) ソーシャルは広告収入があることが前提でビジネスで提供されています。つまり、1から3まで広告なんです。インターネットという「道路」をコンテンツやサービスという「クルマ」が通るには広告という「燃料」が直接的にも間接的にも必要です。これはモバイルでもほぼ変わりません。App Storeが加わったくらいなものです。

インターネットは常に脚光を浴びてイノベーションの象徴とされてきましたが、広告は日陰者の邪魔者で悪いニュースがほとんどでした。しかしながら、広告はインターネットの根幹の一部ですので、改めてきちんと理解しておきたいところです。

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オンライン広告の歴史

最初のオンライン広告:バナー広告

最初のオンライン広告はアメリカの雑誌Wiredのオンライン版であるHotWiredのローンチのために1994年10月27日に掲載されたバナー広告でした。最初に人気の出たブラウザーのMosaicがリリースされたのが1993年の1月23日ですから、ブラウザー登場から2年弱で最初のオンライン広告が生まれたことになります。

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最初のオンライン広告(クレジット:Wired)


当時にはまだクリックごとにチャージされるPay Per Clickはなく、バナー広告の設置期間によって広告の価格が決まっていました。当時のオンライン広告は雑誌の延長線にあって、限られた紙面をどれくらい占有するかが価値の測り方だったんですね。

検索の誕生:GoogleのAdWords

一番はじめに検索連動型広告を発売したのはOpen Textでした。1996年のことです。しかし、一般的に検索連動型広告を世に広めたのはOvertureでしょう。GoTo.com(Overtureの最初の名前。のちにYahoo!に買収される)が検索連動型広告を発売したのが1998年です。Overtureの検索連動型広告はMSNやYahoo!といった当時の人気ポータルサイトに採用されました。そして、スーザン・ウォシッキーのガレージでGoogleが産声をあげたのが1998年9月4日です。最初のオンライン広告から4年が経過しています。

インターネットのビジネスにとって重要なのはどれだけのコンテンツやサービスがその道を通るか。つまり交通量(トラフィック)が重要な要素となります。Googleの検索の仕組みであるPageRankは優れいていたので、結果的にオンライン広告の仕組みであるAdWordsはより多くの燃料を生み出すことになりました。

Googleがどうやって会社を運営する資金を稼いでいるかといえば、この広告収入です。広告収入がなければGoogleという企業自体存在することができません。2017年度のGoogleの売り上げ(2017 annual report)は1110億ドル(約12兆4700億円)ですが、広告売り上げは約86%の953億ドル(約10兆円)です。5年前くらいは95%以上が広告収入だったので、これでも比率としてはだいぶ下がってきましたが、まだまだ大きな割合を占めています。

ソーシャルの誕生:Facebook Flyer

ソーシャルといえばFacebookですね。Facebookの売り上げの98%は広告です(2017 annual report)。Facebookは2004年の創業時から広告をビジネスモデルとしてきました。ただ、初期のFacebookは友達のニュースフィードを見ることはできませんので、見た目は随分と違ったものでした。

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Facebookの初期の広告(クレジット:collegewebeditor.com)

その頃のFacebookの広告がFacebook Flyerでした。その間にニュースフィード(2006年)を発表したり、ソーシャルグラフをベースにしてFarmVilleのようなサードパーティーのアプリケーションにプラットフォームを解放(2007年)したり、Facebook Connect(2008年)で外のサービスと繋がるようにしたり、「いいね」(2008年)を発表してソーシャルプラットフォームとして磨きをかけてきました。2006年からFacebookがMySpaceを追い抜いたのは2009年の三年間がFacebookが一番輝いていた頃ですね。過去形にして申し訳ないですが。

ターゲット広告:Cookieとソーシャルグラフ

勢いは徐々に弱まりつつあるものの、ソーシャルは検索とともにトラフィックの二大巨頭です。Shareholicの調査データによると2016年まではソーシャルのトラフィックが検索を上回っていました。

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検索とソーシャルのトラフィックトレンド(クレジット:Shareholic)

広告のプラットフォームとして考えた時に、交通量(トラフィック)以外にもう一つ大切なことがあります。それがターゲット情報です。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」ではなく、あるターゲットとなるマトを絞って広告を表示させたいですよね。インターネットのビジネスを考える上でトラフィックと並んで大切な概念がコンバージョンです。

例えば、100回広告を出して1個売れたとします。この場合、100のトラフィックで1%のコンバージョンということになります。これが20回広告を出して、同じく1個売れたとします。この場合は20のトラフィックで5%のコンバージョンということになります。結果が同じなら5%のコンバージョンの方が効率的です。

このコンバージョンを高める方法のひとつがターゲット広告です。

ソーシャルメディアの場合

ソーシャルメディアの場合は、かなり個人情報を提供していますよね。年齢、住んでいる地域、性別、好きな映画や音楽、そして交友範囲。これらが広告の出し分けに利用されています。

この仕組みは基本的には企業のオウンドメディアでも同じです。サインアップしてプロフィールを登録すれば、それを広告やキャンペーンに利用できます。

Facebookの場合はFacebookピクセルによってリターゲティングやダイナミック広告も可能にしています。

バナー広告や検索連動型広告の場合

ソーシャルメディアやオウンドメディアの場合はプロフィールを提供するから広告もターゲットできる理由がわかりますよね。それではバナー広告や検索連動型広告の場合はどうでしょうか。

Cookieとは

オンライン広告のかなり初期からCookieは利用されてきました。Cookieは簡単に言えば識別情報です。例えばAさんがサイトXにアクセスします。サイトXはCookieというテキスト情報をAさんのブラウザに渡します。この時に初めての訪問なので「ようこそいらっしゃいました!」と表示します。

AさんがサイトXを2回目に訪問した時、サイトXはCookie情報を読むことでAさんが2回目の訪問だとわかります。2回目なので「お帰りなさい!」と違うメッセージを表示することができます。これは非常に単純な例ですが、もっと高度なことができます。

例えば、なんでGoogleは訪問者の年代や性別、趣味嗜好を推測することができるのでしょうか?GoogleもCookieを使っていて、その情報を分析しているからです。AIはとっくの昔にあたりまえのように広告では使われています。広告はインターネットの燃料なんですから。

Cookieデータが人の形になる:データをまとめるDMP

広告をターゲットのユーザーに出し分けるために、ソーシャルのプロファイルやピクセル情報、企業のオウンドメディアの情報、それに加えてCookie情報があるのがわかりました。でも、それってバラバラですよね。じゃあ、まとめてしまいましょう!というのがデータ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)です。ツールとしては日本だとTreasure DataとかAudienceOneが有名でしょうか。

ログイン情報がない場合、そのサイトに訪れるユーザーのプロフィールは推論するしかありません。その推論の方法がLook-alikeという分析方法で、データはCookieから得ることができます。例えば、同じバナー広告でもユーザーの特性によって背景や天気を変えたりできます。京都のユーザーが雨の日にサイトに訪れたら京都の背景に雨が降ってるのに、東京は晴れていたら晴れた日のスカイツリーを背景にするとか。

ひとつのCookieデータだけだとぼんやりとして見えなかったユーザー像がいろんなデータを組み合わせることによってよりくっきりと見えてきます。世の中にはLotameSalesfoce DMP(旧Krux)、Nielsen DMP(旧Exelate)のような多くのデータ取引所があります。

(次回はGDPRやブラウザーのCookie締め出しといった広告モデルの変革の必要性について書く予定です)