カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

2018年洋書ベスト5冊|ベスト・オブ・2018

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2018年に出版された英語圏の書籍で目立つトレンドをカタパルトスープレックス 的に総括すれば「揺り戻し」ではないかなと思います。『リーンスタート・アップ (原題:Lean Startup)』をさらに押し広げた『スタートアップ・ウェイ(原題:Startup Way)』やショーン・エリスが満を辞して出したグロースハック本の決定版『グロースハック完全読本(原題:Hacking Growth)』がいまひとつ盛り上がっていないのはハイプカーブを下がって成熟してきたからだけではないような気がします。シリコンバレー的にイケイケで生き急ぐやり方に嫌気がさしてきているのかもしれません。

一昨年『その「決断」がすべてを解決する(原題:Subtle Art of Not Giving a F*ck)』がベストセラーになったのも、そんな時代の表れでしょう。

"It Doesn’t Have to Be Crazy at Work" by Jason Fried and David Heinemeier Hansson

そんな空気感は2010年くらいから広がってきていて、そのきっかけを作ったのはBasecamp創業者の二人が書いたベストセラー『小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード(原題:Rework)』だったんだと思います。

そして、その空気感をより明確に表したのが今年になって発売された"It Doesn’t Have to Be Crazy at Work"でした。「狂ったように働かなくたっていいんだ」とより直接的なメッセージとなっています。

It Doesn't Have to Be Crazy at Work

It Doesn't Have to Be Crazy at Work

  • 作者: Jason Fried,David Heinemeier Hansson
  • 出版社/メーカー: HarperCollins Publishers Ltd
  • 発売日: 2018/10/04
  • メディア: ペーパーバック
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(書評は鋭意執筆中)

"AI Superpowers" by Kai Fu Lee

カイ=フー・リーが打ち出したOMO (Online Merge Offline)は2018年において最も影響力のあったコンセプトでしょう。そのOMOを本人が解説している"AI Superpowers"はインターネットとAIでこれからビジネスを作ろうと考えている人であれば必ず読んだほうがいいです。全体的にテクノロジーに対してネガティブな書籍が多かった中、さらに先を見据えたビジョンを提示しているという意味でも貴重な本でした。

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order

AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order

"Brotopia" by Emily Chang

シリコンバレー的なやり方に嫌気がさしてきたのは若い白人男性を中心とした「ブロカルチャー」の影響も少なくなさそうです。そして、これはスタートアップ的なやり方自体に疑問符がつけられている今だからこそ耳を傾けられて、ベストセラーにもなったんだと思います。これが5年前なら、どれだけ正当な意見でもかき消されていたでしょう。

"Lab Rats" by Dan Lyons

シリコンバレー的なやり方に直接的に批判をして、大きな反響を生んだのはダン・リオンズの"Disrupted"でした。今年発売されたダン・リオンズの最新作である"Lab Rats"は個人的な体験をまとめた前作の"Disrupted"をより体系的にまとめて一般的な現象として捉えています。

詳しくはちゃんと書評に書く予定ですが、アジャイル、リーンスタートアップ、デザイン思考、ティール組織やホラクラシーなどメッタメタに切りまくっています。大事なのは単に批判しているだけでなく、きちんと理解をして書いているところ。

Lab Rats: How Silicon Valley Made Work Miserable for the Rest of Us (English Edition)

Lab Rats: How Silicon Valley Made Work Miserable for the Rest of Us (English Edition)

(書評は鋭意執筆中)

"Factfulness" by Hans Rosling

 2018年にもう一つ傾向があったとしたら「世の中それほど悪くない」ということだと思います。スティーブン・ピンカーの最新著作"Enlightenment Now"も結局のところ言いたいのは「世の中それほど悪くなってない」でした。そして、そのメッセージをずっと送り続けてきたのがハンス・ロスリングでした。

もう少し正しく言えば「世の中はまだ悪い部分も残ってるけど、全体的には良くなっている」です。ちゃんと統計を見ればわかること。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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