カタパルトスープレックス

興味がない人は無理して読まなくていいんだぜ。

書籍|脳で語られる男女の差はほとんどウソ|"The Gendered Brain" by Gina Rippon

Aは〇〇で、Bは〇〇のようなレッテルはわかりやすく、話題にしやすいですよね。「日本人は」とか「外国人は」とか。女性は直感的で、男性は論理的。女性は地図を読むのが苦手で、男性は話を聞かない。そんな本も出ているくらいです。そんな男女脳のカジュア…

書評|日本にいま必要なのは自己憐憫を止めて冷静に分析する勇気|"Upheaval" by Jared Diamond

文明の誕生をテーマにした『銃と鉄と病原菌』と文明の崩壊をテーマにした『文明崩壊』に続くジャレド・ダイアモンドの新著のテーマは「苦難」でした。人類の歴史をテーマにしたものはユヴァル・ノア・ハラリが『サピエンス全史』と『ホモデウス』で引き継い…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その4)

今回のライブコマースの特集では主にファッションを起点に紹介してきました。しかし、中国でストリーミング+eコマースの文脈で語られるのは主にゲームだったりします。そこで、最後にゲーム文脈でのライブストリーミングを紹介します。日本だとプレイステー…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その3)

eコマースはスケールのビジネスなので寡占化しやすい業種ですが、生鮮、家電など独立しやすい分野もあります。アリババとJDが並存しているのもこの理由ですし、アマゾンがホールフーズを買収したのも同様です。個性が重要なファッションも独立して成立しやす…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その2)

古今東西そうですが、ファッションのeコマースではインフルエンサーが重要な役割を果たします。KIMONOを商標登録しようとして物議を醸したキム・カーダシアンとか。タイでピンクが大流行して、オフィスの中でもピンクを身につけている人が多かった時期があり…

いまさら聞けない世界をリードする中国eコマース事情:ライブコマース編(その1)

アメリカで流行ったサービスがだいたい3年後に日本に来ると言われていました。これがヨーロッパなどだとあまり時差なく入ってくるのですが、日本の場合は言葉の壁もありますし、日本の起業家がアメリカのサービスをパクってはじめるので、時間がかかってしま…

書評|ボクたち自身が問題の一部かもしれないことに気づこう|"Winners Take All" by Anand Giridharadas

ハンス・ロスリングが『ファクトフルネス』で解説してくれたように、マクロの視点で見れば世の中はよくなっています。飢えで苦しむ人たちはだいぶ減りましたし、学校に通う女性も増えました。それでも、悲しいニュースが溢れています。悲しいニュースの多く…

書評|日本のスタートアップが海外のVCから投資されない理由|"Secrets of Sand Hill Road" by Scott Kupor

業界にはそれを象徴する中心地があります。映画の象徴がハリウッドで、金融の象徴がウォール・ストリート(イギリスのシティでもいいですが)であるように、ベンチャーキャピタルの象徴がシリコンバレーにあるサンド・ヒル・ロードなのだそうです。 最も有名…

翻訳記事|アトラシアン成長の秘訣、ロータッチ営業モデル

How Atlassian built a $20 billion company with a unique sales model | Inside Intercom by Geoffrey Keating via Inside Intercom マイクロソフト、オラクル、IBMのような伝統的な法人顧客にソフトウェアを販売する企業は同じようなやり方で営業します。…

書評|天才は回り道をしながら遅れてやってくる|"Range" by David Epstein

幼年期からの英才教育。タイガー・ウッズやチェスのポルガー姉妹のように特定の分野を小さなころから徹底的にやりこんだ天才たちを例にとって、専門教育に取り組むケースがあるようです。さらに、マルコム・グラッドウェルの『天才! 成功する人々の法則(原…

書評|人見知りのためのネットワーキング指南|"Taking the Work Out of Networking" by Karen Wickre

昔から異業種交流会のような新しい出会いの場はありました。インターネットの時代になり、特定の興味を持った人たちが集まるイベントやコミュニティーを見つけることが容易になりました。Facebookグループやイベント検索、海外ならMeetupやEventbrite、国内…

書評|議論するツールとしての「腐敗」| "America, Compromised" by Lawrence Lessig

ローレンス・レッシグといえばクリエイティブ・コモンズの設立でフリーソフトウェアとインターネット文化への大きな貢献で有名ですね。あまりに有名なので、ボクがここで付け足す必要もないでしょう。そんなレッシグの新著。レッシグはここ最近は政治の腐敗…

映画評|熱量の少ないドキュメンタリー映画|Titicut Follies

『チチカット・フォーリーズ』はドキュメンタリーの名手フレデリック・ワイズマンの初監督作品。友人から韓国で発売されているDVDをお借りして初めて観ました。 精神異常犯罪者を収容する病院の日常を描いたドキュメンタリー作品。フレデリック・ワイズマン…

書評|悲観主義者の逆襲 "Falter" by Bill McKibben

「世の中それほど悪くなってない」と考える楽観主義者と「世の中は悪くなっている」と考える悲観主義者に分けることができます。楽観主義者の代表はこのブログの書評でも紹介したハンス・ロスリングの『ファクトフルネス』やスティーブン・ピンカーの"Enligh…

書評|Oculusの歴史「ラッキー・パーマーの章」 "The History of the Future" by Blake J. Harris

スマホの伸びが鈍化していて「スマホの次のプラットフォーム」が期待されています。「スマホの次」に期待がかかるのはAmazon Echoに代表されるボイスと、Oculusに代表されるVRですね。今回紹介する書籍"The History of the Future"はOculusの創業からFaceboo…

書評|プログラマーという人たち|"Coders" by Clive Thompson

職業には特定のイメージが付きまといます。弁護士は硬いイメージ、ホストはチャラいイメージ。今回紹介するクリーヴ・トンプソンの"Coders"はプログラマーに焦点を当てて、どんな人たちなのかを描いていきます。プログラマーも内向的でコミュニケーションが…

翻訳記事|FigmaにおけるUIのリフレッシュプロジェクトの過程

We refreshed Figma's UI: An inside look at our process by Rasmus Andersson 今日はこの半年間、私たちが取り組んできた新しいFigmaのUIを公開することになりました。タイポグラフィー、レイアウト、色、アイコンにいたる細部にわたる微妙な変化に気づく…

書評|イノベーションは文化でなく仕組みで作る|"Loonshots" by Safi Bahcall

イノベーション推進の取り組みを行っている企業はたくさんあると思います。組織の外から取り込むこともあります。スタートアップを買収したり。また、組織の内側から変える取り組みもあります。アジャイルやリーンスタートアップに取り組んだGEなんて代表例…

書評|「価値」と「生産性」の再定義|"Value of Everything" by Mariana Mazzucato

日本は生産性が低いといわれていますが、それは本当でしょうか。 生産性の計算は労力や資本といったインプットに対して、どれくらい価値を生み出したかというアウトプットから算出されます。では、そのアウトプットである「価値」ってなんでしょう?一般的に…

スタートアップ国家エストニアの脆弱性

エストニアでマネーロンダリング(資金洗浄)が行われている疑いがあるとして、世界を騒がせています。ノルウェーのダンスケ銀行のエストニア支店を通過した約26兆円に相当する資金が疑わしい取引であったということです。いま、このスキャンダルはドイツ銀…

金持ちのキャッシュレスと貧困のキャッシュレス

キャッシュレスの大きな需要は二つあります。ひとつは富裕層ためのキャッシュレスで、もうひとつは貧困層のためのキャッシュレスです。この二つの異なる需要はきちんと分けないといけないなあと思います。 富裕層とか貧困層って日本ではあまりピンと来ないか…

書評|独占禁止法の歴史から現代のGAFA寡占と経済の停滞を検証する|"The Curse of Bigness" by Tim Wu

多くの人は世の中を悪くしてやろうなんて考えてないですし、その人たちなりの正義に基づいて行動しています。ある人にとっての正義が、別の人の正義ではないというだけです。それはこれまで散々もてはやされていたGoogleやFacebookが、ここ最近は悪者として…

抄訳|ウェブのための協定(Contract for the Web)

原文:"Principles for a Contract for the Web" by World Wide Web Foundation ウェブのための協定(Contract for the Web) 基本原則 ウェブは人々が集まり、自由に知識を共有できるようにするために設計されました。すべての人にウェブが人間性に貢献する…

書評|脳から見た人間と社会の関係|"Social" by Matthew Lieberman

最近はソーシャルメディアに対して批判的な意見が多く出てきています。ソーシャルメディアがなぜ有害なのかを論じる上で、人間と社会の関わり合いを科学的に説明すると感じる論者は多いようで、今回紹介するマシュー・リーバーマンの著書"Social"(日本語タ…

ビットコインやイーサリアムはもうオワコンなんですか?

一時期の喧騒が嘘だったようにクリプト関連が冷え込んでいますね。あれだけあったビットコインがらみのテレビCMもめっきり見なくなりました。ビットコインもイーサリアムも一年前に比べたらその価値は半分以下ですものね。 とはいえ、ボク個人はブロックチェ…

書評|FBIのデザイン思考的な交渉術|"Never Split the Difference" by Chris Voss and Tahl Raz

映画『交渉人』は濡れ衣の罪を晴らすために人質をとって立てこもるシカゴ警察東分署交渉人(ケヴィン・スペイシー)と人質開放の交渉を引き受けたシカゴ警察西分署の交渉人(サミュエル・L・ジャクソン)のやり取りが素晴らしい映画でした。 今回紹介する書…

コトづくりの時代に日本発世界へは正しいアプローチか?

日本のVCのアドバイスとしてよく聞くのが「まずは日本で成功して、それから世界に展開したほうがいい」です。本当でしょうか?このようなアドバイスには「個人的な意見ですが」と続く場合がほとんどです。なぜ「一般的にそう」と言えないのでしょうか?それ…

映画|アメリカ版低学年の『トレインスポッティング』|mid90s(ネタバレなし)

今回は優良作品を連発しているスタジオA24の最近の作品の中でもまだ日本未公開の"mid90s"の紹介です。監督は今回が初監督作品となるジョナ・ヒル(写真)です。A24って『へレディタリー/継承』で初監督を務めたアリ・アスターといい、経験が少ないけどいい…

音楽|本物の80年代リバイバル?|WeezerとTrevor Horn

ウィーザーって最初のブルーアルバム"Weezer"と次の"Pinkerton"でいきなりピークを迎えてから、長い停滞期を経て”Hurley”でちょっと立て直して"Everything Will Be Alright In The End"で完全復活したというのがボクの見立てです。このアルバムはマジで大好…

書評|Facebookではスパークジョイしない!デジタル断捨離のススメ|"Digital Minimalism" by Cal Newport

コンマリこと近藤麻理恵さんはすごいですよね!アメリカでも大人気です。アメリカの価値観の基本は「消費」であり「ショッピング」です。足し算の生活。コンマリはスパーク・ジョイ(心がときめく)という非常にわかりやすいキーワードで断捨離(引き算の生…